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ゴマサバより3倍も脂がのった秋サバ「マサバ」 近年注目されるEPA、DHAを逃さない食べ方を専門家が解説
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教えてくれた人:和漢 歩実

日本の食卓で親しまれているサバ。近年は青魚の油が注目され、体に良い食材として一気に人気が出ています。通年出回りますが、サバといっても実は種類があり、栄養素も異なるそうです。とくに秋になると、「秋サバ」と呼ばれるサバが出回りますが、何が違うのでしょうか。栄養士で元家庭科教諭の和漢歩実さんに伺いました。
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流通しているサバは3種類、日本沿岸で獲れるものは2種類
実りの秋といわれますが、農作物だけではなく、おいしい魚が増える季節です。サバもそのひとつ。冬に備えて積極的にエサを食べて、脂肪を蓄えます。漁獲地域で違いがありますが、この時期に水揚げされるサバを「秋サバ」と呼び、肉質が良く、旨味と甘さが楽しめます。
ただしサバといっても、日本に流通しているサバは、マサバ、ゴマサバ、大西洋サバの3種類。一般的に、サバというとマサバのことを指します。マサバは、春から夏にかけて産卵しながら北上し、秋には越冬や産卵準備のために南下する回遊魚です。つまり、秋サバは、秋に獲れるマサバのことをいいます。
大西洋サバは、大西洋で獲れるサバで、干物や塩サバ、締めサバなどに加工冷凍されてから日本に運ばれます。ノルウェーからの輸入が多く、ノルウェーサバと呼ばれることも。日本で獲れるサバはマサバかゴマサバで、特徴は次の通りです。
○マサバ
日本沿岸で獲れる一般的なサバ。青緑色の背と白銀色のお腹が特徴です。「ホンサバ」や「ヒラサバ」などとも呼ばれます。秋になると、大きいものは50センチほどになることも。
○ゴマサバ
日本沿岸の暖かい海域でとれます。お腹にゴマのような小さな黒い斑点があるのが特徴。切ったときの断面に、マサバと比べて丸みがあることから「マルサバ」とも呼ばれます。
マサバのほうがゴマサバより脂質が多い?
サバは、健康に良い栄養成分が豊富なことで、近年注目されています。ただし、種類によって、栄養価が異なります。マサバとゴマサバについて、日本食品標準成分表(八訂)増補2023年に基づき、主な栄養価(100グラムあたり、生)を比較してみましょう。
○エネルギー
マサバ:211キロカロリー
ゴマサバ:131キロカロリー
○脂質
マサバ:16.8グラム
ゴマサバ:5.1グラム
○たんぱく質
マサバ:20.6グラム
ゴマサバ:23.0グラム
マサバはゴマサバに比べると、脂質が多く、カロリーが高い特徴があります。脂質に関しては3倍以上の差があり、脂がのった秋サバでは脂質の量はもっと多くなるともいわれています。
脂質が多い食品は、太りやすいイメージがあるかもしれません。しかし、サバの脂質は、不飽和脂肪酸が多く、血液をサラサラにして血栓や動脈硬化の予防に役立つEPA、脳の活性化の効果が期待されるDHAなど、良質な油が豊富です。健康のためには、積極的に摂取したい食品といえるでしょう。
栄養を逃さない調理方法とは
秋サバのEPAやDHAなどの栄養を最大限に生かすならば、煮つけがおすすめです。もちろん、おいしく食べるのが一番ですが、栄養メリットからいうと、サバの良質で有効な油は、塩焼きにすると網からしたたり落ちて失われ、揚げ物では揚げ油に流出してしまいます。
みそ煮にすると、みその原料である大豆の栄養も摂取できます。大豆には悪玉コレステロール値や血糖値の上昇を抑制し、動脈硬化や糖尿病予防などで知られるレシチンやサポニンが含まれており、さらに栄養バランスがとれた一皿になるでしょう。
サバ特有の臭みが気になる場合は、調理前に塩を振り、水分が出てくるまで10~20分ほど放置します。表面に出てきた水気はペーパーでしっかりと拭き取ってください。さらに酒を表面に振ってペーパーで拭き取ると効果的です。または、3倍ほど水で薄めた酢をボウルに入れ、そこにサバをくぐらせ、ペーパーで拭き取ります。そのうえで調理すると、臭みが軽減されます。
(Hint-Pot編集部)
和漢 歩実(わかん・ゆみ)
栄養士、家庭科教諭、栄養薬膳士。公立高校の教諭として27年間、教壇に立つ。現在はフリーの立場で講師として食品学などを教える。現代栄養と古来の薬膳の知恵を取り入れた健やかな食生活を提唱。食を通して笑顔になる人を増やす活動に力を注いでいる。
ブログ:和漢歩実のおいしい栄養塾