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「思い当たる食事が見つからない」 カンピロバクター食中毒はなぜ原因特定が難しい? 発症まで数日かかる理由を医師に聞いた
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思い当たる食事が見つかりにくい食中毒
症状は、風邪に似た発熱、頭痛、倦怠感などに始まり、その後に下痢(ときに血便)、腹痛、吐き気が出てきます。多くは数日で回復しますが、強い脱水を起こす場合や、まれに手足の筋力低下やしびれなどを起こすギラン・バレー症候群などの神経合併症につながることもあるため、注意が必要です。
また、カンピロバクターに感染してから症状が出るまでの期間は、一般的に2~7日、平均で2~5日程度とされています。ほかの食中毒菌、たとえばサルモネラ菌や黄色ブドウ球菌などが感染後数時間から1日程度で症状を示すのに比べ、比較的長い潜伏期間が特徴です。
カンピロバクターの潜伏期間が長いのは、菌が体内で感染を成立させる仕組みに理由があります。黄色ブドウ球菌のように、毒素を食べた直後から症状を引き起こす細菌と違い、カンピロバクターは腸管に侵入して増殖し、粘膜に炎症を起こすことで症状が現れます。
つまり、食べた瞬間に症状が出るのではなく、菌が腸に定着し炎症反応を起こすまでに数日かかるのです。また、摂取した菌量や個人の免疫状態によっても発症のタイミングは変わり、同じ食事をしても全員が同時に発症するわけではありません。
こうした特徴があるため、カンピロバクターに感染した患者さん自身も「数日前に食べたものが原因」とは結びつけにくく、原因の特定が難しくなることがあります。カンピロバクターは「思い当たる食事が見つかりにくい食中毒」としても知られています。
海外旅行ではとくに注意 加熱不足の肉料理や生水を避けて
海外旅行では、とくに衛生環境が十分でない国や地域での食事・飲料に注意が必要です。加熱不足の肉料理や、屋台の食事、生野菜のサラダ、生水や氷などが感染源になることがあります。
また、現地で新鮮に見えても衛生管理が十分でない場合があり、日本に比べて感染リスクは高いと考えたほうが良いでしょう。海外では、下痢症全体の原因として、カンピロバクターが最も多い国もあります。旅行中は「加熱が十分な食品を選ぶ」「生水や氷を避ける」ことが基本的な予防策になります。
季節を問わず、家庭でも旅行先でも十分気をつけましょう。
防衛医科大学校医学科卒業。がん研有明病院下部消化管内科副医長を経て、現在は天王寺やすえ消化器内科・内視鏡クリニック院長。日本内科学会総合内科専門医、日本消化器病学会専門医・指導医、日本消化器内視鏡学会専門医・指導医。わかりやすく丁寧な診療を心がけ、地域医療に従事している。
(Hint-Pot編集部)
