Hint-Pot | ヒントポット ―くらしがきらめく ヒントのギフト―

海外ニュース

「あんなに外に突き出して危なくないの?」 シンガポールの洗濯事情に衝撃 日本人女性が驚いたわけとは

公開日:  /  更新日:

著者:荒木 優里

シンガポールの街で見かける光景。長い竿には洗濯物が(写真はイメージ)【写真:PIXTA】
シンガポールの街で見かける光景。長い竿には洗濯物が(写真はイメージ)【写真:PIXTA】

 海外へ行くと、日本の日常では考えられないような光景を目の当たりにすることもあるでしょう。その国ならではの文化や習慣に、驚いたり戸惑ったりすることも少なくありません。夫の仕事でシンガポールへ移住した、フリーアナウンサーの荒木優里さん。新たな環境で発見した、日本との違いを綴ります。今回は、思わず驚いたシンガポールの洗濯事情です。

 ◇ ◇ ◇

街中で目にする独特の洗濯風景

 シンガポールで暮らしていると、街のちょっとした光景から「日本とは違うな」と感じる瞬間があります。そのひとつが、公営住宅(HDB)の窓辺から外へまっすぐ突き出た竿に、カラフルな洗濯物がずらりと並んで揺れている光景です。国民の約8割が暮らすHDBでは当たり前の光景ですが、日本で育った私にとってはいまだに新鮮な驚きとして映ります。

 初めて見たときは、「あんなに外に突き出して危なくないの?」「落ちたりしないの?」と衝撃を受けました。竿を持ち上げて窓枠に差し込む作業は、力のない高齢者には大変ですし、実際に洗濯物や竿が下に落ちてしまう事故もあるといいます。日本であればベランダの内側に干すのが一般的なので、外側を大胆に使う方法に圧倒されました。

 とはいえ、シンガポール人の友人に聞いてみると、彼らにとっては当たり前の光景だそうです。小さい頃から見慣れているため、特別に意識することはなく、むしろ外に干す方が乾きやすいという合理的な理由があるのだとか。たしかに、年間を通して高温多湿なシンガポールでは、強い日差しと風を直接当てたほうが効率的なのかもしれません。

日本とは違う洗濯物に対する意識

 日本では「洗濯物はできるだけ人目に触れない場所に」と考える人も多いですが、シンガポールでは「いかに早く乾くか」が優先される傾向があるようです。暑さの影響もあり、洗濯頻度はかなり高く、毎日のことだからこそ、効率重視のスタイルが根付いたのかもしれません。

 洗濯物の干し方については、安全面でも改善が進んでいます。最近の公共住宅(HDB)ではベランダに干す形式が増え、旧型の竿差し込みタイプの建物でも、引き出し式の物干しラックの導入が進められているようです。

 また、日本人が多く住むコンドミニアムには、乾燥機が設置されていることが多く、私は実際にこの干し方を経験したことはありません。少し危険を伴う従来のスタイルは、今後減っていく可能性があります。

 そう考えると、窓から竿を突き出したこの独特の光景は、何十年後かには貴重な「昔のシンガポールの暮らし」として語られるかもしれませんね。

日本の洗濯事情に感心

 シンガポールではいかに早く乾かすかが前面に出る一方で、日本では水をできるだけ無駄にしないという考え方が見られるように思います。たとえば、私がシンガポールの友人に「日本ではお風呂の残り湯を洗濯に使う家庭もある」と話したところ、「それはとても環境に優しいね!」と感心していました。

 しかし、シンガポールの家庭にはバスタブがほとんどなく、シャワーだけの造りが一般的。そのため水をためて再利用するのは難しく、「真似はできないわね」と言っていました。住まいの環境が違えば、洗濯ひとつ取っても習慣は大きく変わるのだと実感します。

 日常生活でのちょっとした発見ですが、こうした違いに気づくたび、日本の暮らしは安全面などへの配慮が整っているなと改めて感じます。

(荒木 優里)

荒木 優里(あらき・ゆり)

米ニューヨーク州在住のフリーアナウンサー。慶應義塾大学を卒業後、KSB瀬戸内海放送、テレビ埼玉で局アナとして勤務し、報道番組のキャスターや情報番組の中継リポーターなどを担当。2022年夏に渡米し、現在は初めて体験する海外生活での奮闘ぶりを日々発信中。