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サツマイモを食べるとおならが出るのはなぜ? 「ヘルシーなガス」といわれる理由とは 栄養士が解説
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教えてくれた人:和漢 歩実

秋の味覚として人気のサツマイモ。ほくほくした食感と優しい甘みが特徴で、焼き芋で食べる方も多いでしょう。しかし食べると気になるのが、おなら。サツマイモを食べると、おならが出やすくなるように感じる人も少なくありませんが、なぜでしょうか。理由や対策などを、栄養士で元家庭科教諭の和漢歩実さんに伺いました。
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食物繊維が豊富なサツマイモ
サツマイモを食べるとおならが出やすくなるのは、食物繊維が多いためと考えられています。また、サツマイモ特有成分の「ヤラピン」に、腸のぜん動運動を促す作用があることも一因しているとみられています。
そもそも、体内でおならが作られる仕組みは2つあります。ひとつは、腸内細菌が食べ物を分解する際に発生するガスによるもの、もうひとつは口や鼻から飲み込んだ空気によるものです。
食物繊維が多いサツマイモは、消化に時間がかかるので、腸が伸びたり縮んだりして動く「ぜん動運動」が活発となります。この運動のときに腸内細菌によって分解されてガスが発生し、おならになります。つまり、ぜん動運動が盛んになるサツマイモは、ガスの発生も増えておならが出やすくなるのです。
食物繊維が分解されて発生したガスは、アンモニアや硫化水素をほとんど含まないため、サツマイモを食べたあとのおならは、一般的にあまり臭わないとされています。腸が活発に働いた「ヘルシーなガス」ともいわれます。もし臭うようでしたら、サツマイモによるものというよりも、腸内環境が乱れているかもしれません。
食べて出るのは、生理的な現象
個人差があるものの、おならが出ることは生理的な現象で、止めるのは難しいです。とはいえ、少しでもおならが出るのを減らしたい場合は、ゆっくりとよく噛んで、食べすぎないことを心がけましょう。
早食いすると、空気を一緒に飲み込んでしまうので、空気の一部がおならとして排出されることがあります。よく噛んで食べましょう。よく噛むことで唾液が分泌され、唾液に含まれる酵素が消化を助けてくれます。おいしいからとつい食べすぎてしまうと、さらにぜん動運動が活発になり、たくさんのガスが発生します。適量を楽しく食べましょう。
サツマイモを皮ごと食べれば、おならを防げるといわれることがありますが、かえってガスが発生しやすく、おならが出ると考えられます。皮付近には食物繊維が多いうえ、皮は消化に時間がかかるので、おならの軽減には期待できないでしょう。
むしろ、サツマイモを食べておならが出るのは、腸がしっかり働いているサインでもあります。サツマイモはビタミンCや食物繊維など栄養も豊富で、腸内環境を整えるのに役立つ食材です。
おいしい焼き芋のコツは、じっくり低温で
日本では現在、さまざまなブランドや種類のサツマイモが作られています。食感もホクホク系やねっとり系などの種類があります。「紅あずま」や「紅はるか」、「金時」などは人気ですね。「安納芋」は、焼くと蜜が出てくるほど甘味が強く、焼いたあとに冷やすとアイスクリームのようになりおいしいです。
おいしい焼き芋を作るコツは、低温でじっくり加熱することです。糖化が進み、甘味が増します。電子レンジで急激に加熱すると甘味が増しません。自宅で甘い焼き芋を作る場合は、フライパンが手軽です。アルミホイルに包んだサツマイモを、巻き終わりを上にしてフライパンに入れて、底から1センチほどの高さまで水を注ぎ、中火で加熱します。沸騰したらフタをして、弱火にし、50分ほど蒸し焼きにすると完成です。
早食いや食べすぎに気をつけながら、秋の味覚をおいしく楽しみたいですね。
(Hint-Pot編集部)
和漢 歩実(わかん・ゆみ)
栄養士、家庭科教諭、栄養薬膳士。公立高校の教諭として27年間、教壇に立つ。現在はフリーの立場で講師として食品学などを教える。現代栄養と古来の薬膳の知恵を取り入れた健やかな食生活を提唱。食を通して笑顔になる人を増やす活動に力を注いでいる。
ブログ:和漢歩実のおいしい栄養塾