新そばが、おいしい季節です。盛りそばにかけそば、山菜そばや肉そばなど、それぞれ好みのそばがあるでしょう。ところで、関東のそば店のメニューで多く見かける「おかめそば」。いろいろな具材が入ったそばです。なぜ「おかめ」と呼ぶのでしょうか。栄養士で元家庭科教諭の和漢歩実さんに伺いました。

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具材で模した「福を呼ぶ顔」

「おかめそば」は、一般的にかまぼこや麩、青菜、シイタケ、タケノコ、卵焼きなどさまざまな具材が入った温かいそばです。店によって具材や並べ方は異なり、発祥にも諸説ありますが、その由来は縁起物として親しまれている「おかめの顔」説が有力です。

　ときは江戸時代後期。現在の台東区にあったそば店が考案したと伝えられています。古くからある日本のお面のひとつ「おかめ」の顔を模して具材を並べたのが始まりのようです。

　おかめは、丸顔で、低く丸い鼻、張り出した頬が特徴です。縁起が良い顔とされ、別名「お多福」や「お福」と呼ばれています。お正月の遊びでは「福笑い」に、節分の豆まきでは「福」として登場する顔です。

　その福を招く顔を、具材で表現する“遊び心”から生まれたのが「おかめそば」です。フタを開けるとおかめの顔が現れる粋な計らいが、当時の江戸っ子たちの人気を集めたとか。まさに現代の“キャラ弁”のルーツともいえるでしょう。

　さらにそばは、年越しそばの習慣があるように、細く長いことから、長寿を願うものといわれています。そのそばに福を呼ぶおかめの顔をのせた「おかめそば」は、二重で縁起が良い一杯として人気を博したようです。

さまざまな具材の栄養でそばをパワーアップ

　もともとそばは、冷涼な気候の痩せた土地で栽培でき、稲の半分の期間で収穫できることから、救荒作物（不作などで食料が不足した時の代用作物）として、そばがきや米に見立てたそば米、そばがゆなどが食べられていました。

　ごはんと比べて、低カロリーですが、たんぱく質を含むなど栄養価が高いのも特徴です。ルチンと呼ばれるポリフェノールが豊富で、毛細血管を丈夫にして血圧を調整する働きが注目されています。このほか、葉酸など水溶性のビタミンB群やミネラルも含まれており、現在は健康食としても話題です。

　そのそばに、たんぱく質が多いかまぼこや麩、卵焼きをはじめ、食物繊維を含むシイタケやタケノコ、ミネラルやビタミンが多い青菜などをプラスした「おかめそば」。そばというと、薬味のみ、またはワカメや山菜、肉など単品の具材のものが多いですが、さまざまな具材が入ったおかめそばは、見た目の華やかさだけでなく、栄養面でも優れている一品といえるでしょう。

　そばの旬は、「夏」と「秋」。今は、秋そばがおいしい季節です。昼夜の寒暖差が大きい環境でじっくりと育った秋の新そばは、そば特有の濃厚な香りと甘みが魅力です。おかめそばで、さまざまな具材とあわせて堪能してみてはいかがでしょうか。

（Hint-Pot編集部）