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秋冬が旬なのに「春菊」と呼ばれるのはなぜ? 優れた栄養メリットを効率よく摂取できる食べ方とは? 栄養士が解説
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教えてくれた人:和漢 歩実

鍋料理がおいしい季節になりました。“名脇役”として存在感を放つのが、春菊です。寒くなってくるこれからの時季が旬の野菜ですが、なぜ「春」菊というのでしょうか。実は「花」に意味があるようです。春菊について、栄養士で元家庭科教諭の和漢歩実さんに、栄養面も含め伺いました。
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花が春に咲き、葉が菊に似ている
春菊は、地中海沿岸が原産地のキク科の植物です。多くの地域では、観賞用として育てられています。食用している国や地域は、日本を含めた東アジアの一部で、世界では珍しいようです。
日本に春菊が伝わったのは、室町時代の頃。江戸時代になると各地で栽培が始まり、広まっていきました。現在、店頭に並ぶ春菊は一見同じようですが、大きく分けて3種類あります。
葉が細めで切り込みが深く、香りが強い「小葉種」、切り込みがあり香りの強い「中葉種」、切り込みが浅くアクが少ない「大葉種」です。ハウス栽培の発達で今は通年手に入るようになりましたが、旬は晩秋から冬にかけてです。
寒い季節が旬にもかかわらず、名に「春」がつく理由は「春に花が開き、葉が菊に似ている」からです。私たちが食用とするのは、花が咲く前の茎や葉ですが、春を迎えると、黄色と白色が混ざり合った可憐な花が咲きます。関西では「菊菜(きくな)」と呼ぶ地域もあります。
春菊は、栄養たっぷりの緑黄色野菜
春菊の独特の香りは、αピネンとペリルアルデヒドという成分で、食欲増進や消化促進に関係しています。この香りが苦手という人もいるかもしれませんが、春菊には優れた栄養メリットがあります。
まず挙げられるのは、βカロテンです。βカロテンは、必要時に体内でビタミンAに変わり、皮膚や粘膜を強くして、ウイルスの侵入を防ぐ働きが期待されます。風邪が気になる寒い季節に食べておきたい、緑黄色野菜のひとつです。
このほか、骨や歯の形成を助けるカルシウムやマグネシウム、コラーゲンの生成に欠かせないビタミンCも比較的多く含まれています。また、赤血球を作るのに必要な鉄や葉酸もあるので、貧血予防に役立つでしょう。