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寿司についしがちな「手皿」は実はNG? 職人の前で恥をかかない正しい和食のマナーを栄養士が解説

公開日:  /  更新日:

著者:Hint-Pot編集部、和漢 歩実

握り寿司としょうゆ皿(写真はイメージ)【写真:PIXTA】
握り寿司としょうゆ皿(写真はイメージ)【写真:PIXTA】

 外国人観光客にも人気の日本の寿司。回転寿司店や家などカジュアルな場であればとくに気にしなくとも、職人さんが握る寿司店で食べる場合、「これは良いの?」と食べ方に戸惑うこともあるでしょう。寿司を食べる際の所作について、栄養士で元家庭科教諭の和漢歩実さんに伺いました。

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しょうゆが垂れないかが心配なときはどうする?

 寿司にしょうゆをつけて口に運ぶ際、しょうゆが垂れないかが心配で、つい寿司の下にもう一方の手を添える「手皿」をしてしまうことがあるかもしれません。一見、上品な印象ですが、和食のマナーでは好ましくないとされています。

 理由は、タレや汁などが垂れて手を汚す可能性があるためです。手が汚れたまま、ほかの食器や箸に触れることは不衛生とされ、周りにも悪い印象を与えてしまいます。

 つまり寿司を食べる際も同様で、手を添えながら食べることは、避けたほうが良いでしょう。とはいえ、しょうゆが垂れるのを心配して、置いたしょうゆ皿のほうに、背中を丸めて前かがみになって顔を近づけるのは、見た目が良くないので、できるだけ避けたい行動のひとつです。

 意外かもしれませんが、しょうゆ皿を持ち上げるのはマナー違反ではありません。しょうゆ皿を胸の高さくらいに持ち上げて、寿司にしょうゆをつけても良いですし、しょうゆをつけてから口に運ぶ際に、しょうゆ皿を持ち上げても問題ありません。このほうが美しい姿勢を保つことができ、きれいな食べ方になります。

 箸を使って食べるときのコツは、シャリの真ん中あたりを軽く挟み、寿司を少し横に寝かせるようにしましょう。まっすぐ持ち上げようとすると崩れやすくなります。手で食べる際は、親指と人差し指、中指を使って寿司の側面とネタを軽くつまみ、横に寝かせて持ち上げるようにすると安定します。

和食のマナーでは持ち上げて良い器がある

 和食では、ごはんが入ったお茶碗や汁物のお椀は、持ち上げて食べるのがマナーです。しかし、そのほかの器で、持ち上げて良いかどうかの基準は、そのサイズにあります。器が手のひらよりも小さければ「持ち上げて良い器」です。漬け物皿やしょうゆ皿なども、食べる際は持ち上げて問題ありません。

 一方で、手のひらよりも大きなものは「持ち上げなくても良い器」です。刺し身の盛り合わせや主菜などが盛りつけられた平皿は、持ち上げずに食べましょう。ただし、例外として海鮮丼やうな重など、一人前のごはんが入ったどんぶり、お重などは持ち上げて食べてかまいません。むしろ、持ち上げず前屈みになって食べるほうがマナー違反です。

 カウンター上で寿司を出すとき、職人さんが握った寿司を並べるスペースを「板」といいます。または、「寿司下駄」と呼ばれる木製の脚付き台が置かれていることがあります。これらを、勝手に持ち上げたり、動かしたりするのはマナー違反になるので、気をつけましょう。

しょうゆはシャリにつけず、ネタや海苔に

 ちなみにしょうゆは、シャリにつけないように気をつけてください。見た目も悪くなり、ぽろぽろと落ちやすくなります。しょうゆは、ネタや海苔につけるものです。少し横に寝かせて持ち、しょうゆを少しだけつけて食べます。つけすぎると、せっかくの素材本来の味が楽しめなくなります。

 寿司は基本的に、一貫をひとくちで食べ切るものです。もしひとくちで食べられない場合は、手や箸で持ったまま食べ続けていきましょう。

(Hint-Pot編集部、和漢 歩実)

和漢 歩実(わかん・ゆみ)

栄養士、家庭科教諭、栄養薬膳士。公立高校の教諭として27年間、教壇に立つ。現在はフリーの立場で講師として食品学などを教える。現代栄養と古来の薬膳の知恵を取り入れた健やかな食生活を提唱。食を通して笑顔になる人を増やす活動に力を注いでいる。
ブログ:和漢歩実のおいしい栄養塾