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イクラとホタテ 「食べ合わせが悪い」といわれるのはなぜ? “真相”を栄養士に聞いた
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教えてくれた人:和漢 歩実

イクラとホタテは、どちらも人気の高い海の幸です。海鮮丼などで一緒に盛られているのを目にしますが、一部では「食べ合わせが悪い」という説もあります。実際のところ、一緒に食べると、栄養面でどのような影響があるのでしょうか。栄養士で元家庭科教諭の和漢歩実さんに伺いました。
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生のホタテに存在する酵素が栄養メリットを阻害?
結論からいうと、通常の量を食べているのであれば、食品の組み合わせによって体に害を及ぼすことはありません。ただし、ホタテとイクラを一緒に食べると良くないと言われるのは、生のホタテに含まれる成分に理由があると考えられます。
チアミナーゼと呼ばれる酵素が、生のホタテには存在しますが、この酵素は疲労回復に役立つビタミンB1を分解することで知られています。一方、イクラは魚介類のなかでも比較的多くビタミンB1を含んでいるため、一緒に食べることで、せっかくの栄養メリットを得られなくなることから、「食べ合わせが悪い」と言われることがあるのでしょう。
といっても、チアミナーゼは生のホタテに限らず、生の貝類やイカ、タコ、エビなどにも含まれています。また、ビタミンB1は、主菜や副菜を意識した現代の食事ではイクラ以外でも摂取することができるため、生のホタテとイクラを一緒に食べたからといって気にすることはありません。
どうしても気になる場合は、チアミナーゼは酸や熱に弱いので、ホタテを加熱するか、レモン汁をかけて食べると良いでしょう。
ホタテもイクラも良質なたんぱく質を含む
ホタテもイクラも、それぞれに良質なたんぱく質や脂肪酸、ビタミン、ミネラルを含む、栄養価の高い食材です。
意外かもしれませんが、ホタテは筋肉や臓器など体を作るうえで欠かせないたんぱく質を多く含みます。日本食品標準成分表(八訂)増補2023年をもとに100グラムあたりのたんぱく質量を比較すると、ホタテの貝柱は16.9グラムで、牛肉(肩ロース)なら13.8グラム、若鶏(もも肉)は16.6グラムです。脂質は少なく、エネルギーも82キロカロリーと低いので、ダイエットが気になる人には向いています。
イクラもたんぱく質のほか、青魚で有名なオメガ3脂肪酸のDHA(ドコサヘキサエン酸)とEPA(エイコサペンタエン酸)が豊富です。とくにDHAは脳の活性化、EPAは血液サラサラ効果や血栓予防が期待できます。このほか、ビタミン、ミネラルもバランス良く含んでいます。ただし、100グラムあたりのエネルギーは252キロカロリーで、コレステロールは480ミリグラムです。しょうゆ漬けなどで塩分も多いので、食べすぎに気をつけてください。
これから年末にかけて、海の幸を楽しむ機会があるかもしれませんが、ホタテとイクラがたっぷりのった海鮮丼は、毎日たくさん食べるものではなく、たまに味わうごちそうです。通常の量であれば、チアミナーゼの働きも体に負担がかかる心配はありません。栄養バランスを心がけつつ、日々の食事を楽しみましょう。
(Hint-Pot編集部)
和漢 歩実(わかん・ゆみ)
栄養士、家庭科教諭、栄養薬膳士。公立高校の教諭として27年間、教壇に立つ。現在はフリーの立場で講師として食品学などを教える。現代栄養と古来の薬膳の知恵を取り入れた健やかな食生活を提唱。食を通して笑顔になる人を増やす活動に力を注いでいる。
ブログ:和漢歩実のおいしい栄養塾
