仕事・人生
「歩くの遅いんだから、もう先に行き始めて」 5年前に芸能界引退から5年→介護士に転身 岩佐真悠子さんが父との関係を見つめ直した介護現場での経験
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「当たり前」が当たり前ではないと気づいた

変化したのはそれだけではありません。不規則だった生活リズムは規則正しくなり、マネージャーやスタッフが自分のために動いてくれていた生活から、今では自分が人のために動くことが仕事になりました。そうした日々のなかで、自身の価値観も変化していったと語ります。
「今まで自分の中で本当に当たり前だったこと。それこそ歩く、食べるっていう普通のことが、当たり前じゃないって気づいたんです。そして、困っている人たちに一声かけるだけでも、手助けになるんです。そういう意味で、価値観は変わったかな。日常の細かい、小さいことを大切に思えるようになりました」
さらに、介護の現場で働くようになって、思わぬ“副産物”もありました。
「おじいちゃん、おばあちゃんは『お嬢さん』とか『お姉さん』とか、『若い』と言ってくれるんですよ。子どもがいるっていうと『え、見えない』とか言ってくれるんで、気持ちがすごく若返ります」
芸能界では、容姿が少し変わっただけで周囲からいろいろと言われることに疲れていたという岩佐さん。一方で介護の現場では、利用者さんから素直な褒め言葉をもらえる機会が多く、それが励みにもなっているそうです。
「介護の仕事をしている人って、年より若く見える人がすごく多い気がしていて。50歳過ぎているんだけれど、全然40歳になったぐらいにしか見えないとか。一緒に運動をしたりして、体を動かすこともありますが、何より若者扱いしてもらえることが大きいですね。毎日おばさんとかおじさんとか言われて、自分でもそう思っていると、気持ちもどんどん老け込んでいくというか。若い意識って良いなって思いました」
学歴も経歴も関係ない現場
また、仕事観にも変化が。介護の現場には、実に多様なバックグラウンドを持つ人たちが働いています。新卒入社の人、さまざまな仕事を経て第2、第3の仕事として介護を選ぶ人、定年退職後に送迎ドライバーとして働く人――。
「学歴どころか、ほとんど何も関係ないのかなって。人柄とか、どういう風にこの仕事と向き合うか、人と向き合うかとか、そういったことの方が大事で」
岩佐さん自身、高校を中退しており、それまでの社会経験も芸能界だけ。しかし、何の準備もなく飛び込んだ介護の世界は、岩佐さんを温かく迎え入れてくれました。
「私はずっと座って勉強をしたりするのは苦手なのですが、仕事と向き合っていると、自然と介護のことを調べたくなります。わからないことは自分で学んでいく。学歴よりもそうした姿勢こそが求められるのだなと感じています」
来年1月には、介護福祉士の試験を控えています。芸能界引退後、結婚しママにもなりました。現在は4歳の子どもを育てながら、介護の仕事や普及活動と並行して、アプリなどを活用し、隙間時間で勉強を進めています。
ゆくゆくはケアマネージャーの資格取得に挑戦したり、自分の理想の介護施設を建てたりするのが目標だという岩佐さん。大きな転身を成し遂げた第二の人生は、まだ始まったばかりです。
2003年にミスマガジンでデビューし、俳優として活躍。2020年から特別養護老人ホームで介護士として勤務開始。その後、訪問介護事業所やデイサービス、介護老人保健施設で経験を積む。2024 12月 介護福祉士実務者研修 修了。現在は介護タレントの西田美歩と2人でYouTube「介護士★西田岩佐」を発信中。2025年12月21日(日)には、「BECK【防災×エンタメ×地域×介護】イベント」を開催予定。
(Hint-Pot編集部)