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仕事・人生

「高齢者が逃げ遅れてしまうことも」 元俳優・岩佐真悠子さんが「命を守る」ための知識を発信する切実な思い

公開日:  /  更新日:

著者:Hint-Pot編集部

芸能界での経験が現場で生きる

毎日、楽しく介護の仕事と向き合っている【写真:くさかべまき】
毎日、楽しく介護の仕事と向き合っている【写真:くさかべまき】

 芸能界で長く“伝える”仕事をしてきた岩佐さんにとって、そのときに培ったスキルは、今の発信活動の大きな力になっています。それと同時に、介護の現場でも、そうしたスキルは確かに生きているといいます。

「人に“伝える”という仕事をしていた分、耳が遠い方とか、認知症で理解力が少し低下してしまって伝わりにくい方でも、伝え方や表情、ボディランゲージ、言葉を置き換えてみたりとか、そういうのはすごく自然にできました」

 さらに、へこたれないメンタルも鍛えられたといいます。失敗をしても、介護の仕事を辞めたいと思ったことは一度もないのだとか。

「失敗したら、じゃあこうしよう、次はこうならないようにって考えるほうで。たとえば、利用者さんを怒らせてしまった場合、それでもお風呂とか、やらなきゃいけないことをやってもらわないといけないことはたくさんあるので、嫌な気持ちにさせないでいかに任務遂行できるか。そういうのを考えるのがけっこう楽しくて」

介護×防災イベントに込めた意図

 そんな介護を熱く語る岩佐さんが今、力を入れているのが、介護と防災をかけ合わせたイベントです。

「日本は自然災害がとても多い国。介護と防災は切り離せません。実際に、高齢者が逃げ遅れてしまったり、取り残されてしまったりすることが多いんです。介護の現場でも、避難訓練はやるんですけど、じゃあ実際に連れて逃げるってなったら、ちょっと無理じゃない? どうしたらいいの? って悩むことが私自身もけっこうあって」

 ひとり暮らしの高齢者については、すべての家を助けにいくわけにもいきません。必要になるのが、本人、家族、地域の連携です。そこで、岩佐さんは西田さんと、タレントで防災士の時東ぁみさんとともに「BECK【防災×エンタメ×地域×介護】イベント」を企画。年齢や障害の有無にかかわらず、音楽の力で、みんなが一緒に楽しんで体を動かせる場を作ります。

「高齢者の方と地域の方、子どもたち、みんな一緒になって楽しめるような場を作りたくて。介護とか防災とか、ちょっと堅苦しいテーマではあるけど、いろいろな世代の方が楽しめるように、いろいろなブースや体験コーナーがあります」

 正解を見つけることが目的ではなく、みんなが考えるきっかけになること。楽しく知れる入り口を作ること。それが、岩佐さんたちの目指すイベントの形です。

 介護も防災も、いつ何時、誰に降りかかってくるかわかりません。自分は大丈夫と思いがちですが、他人事ではなく、自分にも起こり得ることとして意識しておく。その小さな心がけが、いざというときに大きな違いを生むのかもしれません。

◇岩佐真悠子(いわさ・まゆこ)
2003年にミスマガジンでデビューし、俳優として活躍。2020年から特別養護老人ホームで介護士として勤務開始。その後、訪問介護事業所やデイサービス、介護老人保健施設で経験を積む。「2024 12月 介護福祉士実務者研修」修了。現在は介護タレントの西田美歩とふたりでYouTube「介護士★西田岩佐」を発信中。2025年12月21日(日)には、「BECK【防災×エンタメ×地域×介護】イベント」を開催予定。

(Hint-Pot編集部)