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「日本も変わっていく必要がある」 ブルガリア人が日本で子育て中に経験した「つらかった」こととは

公開日:  /  更新日:

著者:Hint-Pot編集部

ブルガリア出身の、シルビア・ヴァレシヴァさん【写真:Hint-Pot編集部】
ブルガリア出身の、シルビア・ヴァレシヴァさん【写真:Hint-Pot編集部】

 日本で暮らす外国人が、その生活のなかで日本文化の素晴らしさを実感する一方で、戸惑いを感じることもあるようです。1990年代に日本で6年間暮らしたブルガリア人女性は、日本での子育てや日本語の習得を通じて、多くの思い出を作りました。ところが、ある点で寂しさを感じていたといいます。いったい、どんなことに戸惑ったのでしょうか。

 ◇ ◇ ◇

家族との時間が持てなかった寂しさ

 アメリカ・サンディエゴ在住で、ブルガリア出身の画家・シルビア・ヴァシレヴァさんは、1990年から1996年までの6年間、家族とともに日本で暮らしていました。大阪、東京、宮城と、夫の仕事の都合で居住地を移しながらの生活だったといいます。

 日本で子育てを経験し、多くの日本人の子どもたちや母親たちと交流を深めたシルビアさん。「日本語でお話しできることは、喜びです。日本を思い出すことができるから、とてもうれしいのです」と語るほど、日本での時間が、今も大切な思い出として心に残っています。

 しかし、1990年代の日本での生活には、寂しさを感じる面もあったといいます。

「日本でつらかったのは、家族らしい生活ができなかったことです。夫は毎日仕事に行って、夜中の12時まで働くこともありました。上司がまだ残っていると、先に帰れないんです。私はそれがあまり好きじゃありませんでした」

 さらに、こんなことも日常的にあり、疑問を持ったといいます。

「休日になると、同僚とゴルフに行ったり、一緒に相撲を観に行ったりしていて。仕事の仲間同士で行動するのが当たり前で、そこに奥さんが一緒に行くことはないんですよね。でも、それって国際的に見ると普通じゃないと思います。仕事の人間関係と家庭は、きちんと分けるべきだと思うし、日本もそこは変わっていく必要があると思っていました」

「助ける」ではなく「一緒にやる」という考え方

 日本にいたとき、シルビアさんにはスウェーデン人女性の知り合いがいて、スウェーデンの男性が家事を手伝ってくれるのか質問したことがあるそうです。すると彼女は、手伝うという考え方ではないことを教えてくれました。

「彼女は『夫は助けないです。夫が私を助けて、私が夫を助けるのではなく、最初からすべてを一緒にやるんです』と語っていました。それは正しいと感じました。もちろん力仕事は、男性に頼むこともあります。でも、スウェーデンの男性は、基本的になんでもできるんです」

 シルビアさんが日本で暮らしていた頃から約30年が経ち、日本の働き方や家庭のあり方は、少しずつ変化してきています。ワークライフバランスの重要性が認識され、家事や子育てを夫婦で分担する家庭も増えてきました。

 異なる文化に触れたからこそ見えた、日本の良さと課題。シルビアさんが当時覚えた違和感は、今の私たちにとっても、家族との時間の大切さを考え直すきっかけになるかもしれません。

(Hint-Pot編集部)