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「自分でできる喜び」を育てる“日本式保育” 自立心を育むメソッドが東南アジアで評価される理由とは

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著者:Hint-Pot編集部

ヒューマンホールディングス株式会社のユリコ デルフィタ バンバンさん【写真:Hint-Pot編集部】
ヒューマンホールディングス株式会社のユリコ デルフィタ バンバンさん【写真:Hint-Pot編集部】

 国際試合の会場で日本人サポーターがゴミ拾いをする様子が話題になるなど、日本のマナーや規律の高さに、各国から称賛の声が寄せられています。その背景には、幼い頃から「自分のことは自分で」という自主性を育む日本の教育があるといわれています。そんな“日本式保育”を、インドネシアで普及させようと尽力している女性がいます。さまざまな分野で活躍する女性たちにスポットを当て、その人生を紐解く連載「私のビハインドストーリー」。今回は、ヒューマンホールディングス株式会社でインドネシア及びマレーシア保育法人のカンパニープレジデントを務める、ユリコ デルフィタ バンバンさんにお話を伺いました。第1回は、異文化での保育運営で直面した驚きの実態と、“日本式保育”の価値についてです。

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根強く残るナニー文化

 ユリコさんが責任者を務めるスターチャイルドインドネシア園(ジャカルタ・クニンガン地区)は、日本で首都圏を中心に42園を運営している認可保育所「スターチャイルド」の海外展開第1号園。2018年の開園以来、ジャカルタに住むさまざまな国籍の子どもたちが一緒に学び、現在は50名以上が在籍しています。

 インドネシア国籍のユリコさんですが、父は在日公館に勤めており、東京で生まれ育ちました。そのため、大人になってから改めて現地の保育事情を知り、とても驚いたといいます。インドネシアで子育てを語る際に欠かせないのが、ナニー(子守ができるお手伝いさん)さんの存在です。

「富裕層だけでなく中間層でもナニーさんがいる家庭が多く、1人の子どもに対して1人のナニーさんというケースも珍しくありません。かなりお金はかかりますけどね」

 しかし、ナニーさんに頼る子育てにはリスクもあるといいます。ある日突然来なくなったり、田舎に帰ってしまったりすることも珍しくなく、そうなると親たちは当然、仕事を休まざるを得ません。信頼できるナニーさんを見つけるのは、とても大変なことなのです。

 その一方で、日本のように保育園を利用するにも、施設型保育施設の普及率はまだ高くないそう。経済的にも、利用へのハードルが高い人は少なくない実情があります。

「一般的な保育園だと月3~5万円くらいが相場ですね。インドネシアの首都・ジャカルタで、最低賃金は5万5000円ほど。さらに、日本のような補助制度はなく、すべて実費です。2~3万円の保育料でも家庭には大きな負担になるため、おじいちゃんおばあちゃんの家の近くに住んで、子どもを見てもらう家庭も多いです」

 このように、ナニーさんを雇うか、保育園に預けるか、祖父母に頼るかという選択になりますが、どれも家計への影響は大きいのが現状です。それでも、子どもの早期教育や社会性を育む教育に関心を持つ人が中間~上位所得層に増え、施設型保育のニーズが拡大しているそう。そうした変化のなか、“日本式保育”の需要は高まっているとユリコさんは言います。