仕事・人生
「自分でできる喜び」を育てる“日本式保育” 自立心を育むメソッドが東南アジアで評価される理由とは
公開日: / 更新日:
「最初の20分は自分で頑張る」革新的取り組み

“日本式保育”が注目される背景に、「大人がなんでもやってあげる」というインドネシアの文化があります。
「日本では2~3歳ほどで身辺自立を促すのが一般的ですが、インドネシアでは6~7歳頃まで、食事のときに口まで運んでもらったり、靴や服の脱ぎ着をさせてもらったりするのが普通なんです」
手厚いケアを愛情とする文化があるインドネシア。子どもを思う気持ちではあるものの、「子どもが『自分でやってみよう』『チャレンジしてみよう』という機会が少ないように感じるんです」とユリコさん。そこで、「できた!」という成功体験を育むカリキュラム作りをしています。
「うちの園では、食事の際に『最初の20分は自分で頑張る。その後10分は補助する』というルールにして、自立を促す改革を実施しました。保育士たちは、最初は戸惑っていたものの、すぐに『あ、確かにそのほうがいいね』と理解してもらえたのがうれしかったです」
世界が注目する“日本式保育”の価値

また、日本では園庭で体を動かしたり、近くの公園までお散歩したりする園児たちの姿をよく見かけます。子どもたちの健全な育成において、日本では外遊びが推奨されていることがその理由です。
しかし、インドネシアは一年中、高温多湿であることだけでなく、公園の数が多くありません。さらに、ジャカルタの市街地は交通量も多く、歩道の整備も十分とはいえないため、近隣の公園まで安全に歩いて行くことが難しいという事情もあります。それらのことから、椅子に座ってワークをする時間が長いのが一般的なのだとか。
そこで同園では、現地で体育教室を開講している団体と提携し、園内でも体を動かす機会を積極的に作りました。環境的な制約はあるものの、“日本式保育”の考え方を工夫しながら取り入れています。
異文化での保育運営は、決して簡単ではありません。しかし、日本の保育が重視する「自分でできる喜び」を大切にする理念は、国境を越えて受け入れられています。「どんなときも『子どもたちが楽しんでいる姿を見たい』という気持ちは変わりません。それが保育の原点だと思っています」と、ユリコさんは話します。
国際社会で称賛される、日本人の規律正しさや思いやりの心。その根底にあるのは、幼い頃から「自分のことは自分で」という自立心と、「みんなで協力する」という社会性を育む教育にあります。文化の違いを尊重しながらも、子どもたちの「できた!」という成功体験を積み重ねていく――それこそ、“日本式保育”が世界に誇れる価値なのです。
(Hint-Pot編集部)