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座布団には「前」と「後ろ」がある? 年末年始の帰省前に確認 知らないと恥ずかしい和室マナーとは
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年末年始の帰省や親戚の集まりなどで、和室に通されることもあるでしょう。何げなく置いてある座布団ですが、実は「前」と「後ろ」があります。またうっかりやると失礼にあたる行為も。今さら聞けない座布団にまつわる作法や和室でのNGを紹介しましょう。
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座布団を準備する際は、表と裏、前と後ろを把握する
今は、和室で座布団に座る機会はめっきり減っています。それだけに、年末年始の集まりなどで座布団の準備をするとき、または客として和室に通されたとき、知らないうちに失礼なことをしていることもあるかもしれません。
座布団を置く際に気をつけたいことは、表と裏、前と後ろがあることです。一般的に、中央にしめ糸の房がある面が表です。座布団によっては両面が使えるよう、しめ糸がないものや、両面に房があるものもあります。その場合は、どちらを表にしても構いません。
座布団は、三辺が縫ってあり、一辺が輪になって縫い目がありません。縫い目のない輪のほうが前です。座る人の膝前にその輪が来るように置きます。カバーがかかっている場合は、ファスナーのあるほうが後ろになるようにすると良いでしょう。
座布団は勝手に動かさない、踏まないのがマナー
客として和室に通された際、座布団で大切なことは、勝手に動かさない、踏まないことです。座布団には「客をもてなす」意味が込められています。したがって、移動させたり、裏返したり、足で踏みつけたりすることは、もてなしの心を踏みにじる行為に通じ、失礼にあたると考えられています。
座布団は、相手から勧められてから座るのがマナーです。いきなり座布団に座るのではなく、いったん後ろか横の位置に座ってから座布団に両手をついて、にじって上がり座ります。降りる際も、座ったまま座布団に両手をついて少し後ろに下がり、足先を座布団から出してから、畳に立つのがスマートです。うっかり座布団の上で立ち上がらないようにしましょう。
和室では座布団以外にも「踏んではいけない」場所がある
座布団以外に、和室では踏んではいけない場所があります。敷居と畳の縁です。敷居とは、障子やふすまなどの引き戸の下部に設置された溝のある部材のことです。戸を開け閉めするレールとしての役割のほかに、諸説ありますが、かつては内と外を分ける結界ともいわれました。敷居はその家の象徴なので、それを踏むことはその家や家人を踏みつけることと同じと考えられ、今もまたぐのがマナーとされています。
また、昔の日本では畳の縁はその家の格式を表し、畳の縁に家紋を入れることも多かったようです。したがって、敷居と同様に、畳の縁を踏むことは家人の顔を踏むことになり、無礼な行為とされてきました。
近年の住宅事情やライフスタイルの変化により、こうした作法が厳密に求められる場面は少なくなっています。ただし、和室には人をもてなすための心遣いや、空間を大切にする考え方が受け継がれています。
座布団の前や後ろをはじめ、やってはいけないことの基本を知っておくだけでも、年末年始の集まりや改まった席で、落ち着いて振る舞えるでしょう。
(鶴丸 和子)

鶴丸 和子(つるまる・かずこ)
和文化・暦研究家。留学先のイギリスで、社会言語・文化学を学んだことをきっかけに“逆輸入”で日本文化の豊かさを再認識。習わしや食事、季節に寄り添う心、言葉の奥ゆかしさなど和の文化に詰まった古の知恵を、今の暮らしに取り入れる秘訣を発信。昭和好き。
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