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断った妻を無視して夫が勝手に決定…70代夫婦のいびつな関係に夫婦カウンセラーがアドバイス
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教えてくれた人:夫婦カウンセラー・原嶋 めぐみ

「家族だから」「助け合いだから」――。断ったはずの頼み事が、夫のせいでいつの間にか“やる前提”で進んでいく日常に、違和感を覚えた70代女性。息子夫婦が飼う大型犬2匹の世話という出来事をきっかけに浮かび上がったのは、頼み事の問題ではなく、夫婦の中で当たり前になっていた決め方のいびつさでした。夫婦カウンセラーがアドバイスを送ります。
◇ ◇ ◇
2匹の大型犬 散歩に出るだけでひと苦労
「もう無理だと思って、私ははっきり断ったんです。それでも、私の知らないところで話が進んでいました」
そう語るのは、関東在住の稲田洋子さん(仮名・70代)。二世帯住宅で長男一家と同居しています。息子の家族が飼っている大型犬2匹の世話を、長期休暇のたびに引き受ける生活が続いてきました。しかし、体力的な限界を感じ、数年前から「もう引き受けられない」と伝えるようになったといいます。
稲田さんは、これ以上は無理だと何度も夫や息子に伝えてきましたが、その意思が尊重されることはありませんでした。
「昨年の正月も、夫からなにげなく言われたんです。『今度の連休、犬預かったから』って」
耳を疑い「私、断ったよね?」と確認すると、「断ると角が立つだろ。俺が話をまとめたほうが、丸く収まるんだよ」と夫は悪びれもしません。そこで「じゃあ、あなたがやって」と言うと、夫は少し困った顔で、次のように言い放ちました。
「いや、俺は犬の扱いが苦手だからさ。洋子のほうが慣れているだろ?」
その「慣れているだろ?」というひと言で、40年以上の結婚生活が頭をよぎったといいます。家事も育児も親の介護も、いつの間にか自分の役割になっていたこと。断っても、調子ばかりいい夫が勝手に決め、話はいつも洋子さんがやる前提で進んできました。
「私が『勝手に決めないで』と言うと、夫は決まってこう言います。『家族なんだから、助け合いだろ』。でも、私は夫に助けてもらったことはありません」
結局、「OKって言っちゃったから。いまさら変えられないよ」と繰り返す夫を前に、洋子さんは息子夫婦を呼び寄せ、引き受けられないと改めてはっきり伝えました。しかし、すでに海外旅行の予定を入れていてキャンセルできないと言われてしまい、話し合いの末、犬たちはペットホテルに預けることに。費用は息子夫婦が支払いました。
その正月、家には夫婦ふたりだけが残りました。すると夫は、テレビを観ながら「今年は静かでいいな」と、取りつくろうように言ってきたそうです。その言葉を聞いたとき、胸の奥がひやりとしたといいます。
これまでのこと、そして今後、夫の介護が必要になるときのことを考えると、離婚もひとつの手ではないかと悩んでいます。
自身の意思が尊重される関係に
今回のケースについて、夫婦カウンセラーの原嶋さんは「問題は頼み事の内容ではなく、決定の仕方にある」と指摘します。
「洋子さんはすでに『できない』と意思表示をしています。それにもかかわらず、夫が本人の同意を取らずに引き受けてしまう。この構造自体が、夫婦関係の問題です」
そのうえで、対応のポイントとして、次のように話します。
「『それくらい』と思うのであれば、次回は夫がすべて引き受ける形を提案してください。同時に、ご自身は体力的にも生活的にも対応できないことを、感情ではなく事実として伝えることが大切です」
最後に、原嶋さんはこうまとめます。
「70代は、相手の都合に合わせて役割を引き受け続ける年代ではありません。これからは、ご自身の意思が尊重される関係に切り替えていく必要があります」
(和栗 恵)