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「数日の我慢」で済ませないで―不衛生な義実家で体を壊した30代妻の限界 夫婦カウンセラーがアドバイス

公開日:  /  更新日:

著者:和栗 恵

教えてくれた人:夫婦カウンセラー・原嶋 めぐみ

義実家の汚すぎる台所に戦慄(写真はイメージ)【写真:PIXTA】
義実家の汚すぎる台所に戦慄(写真はイメージ)【写真:PIXTA】

“帰省ブルー”の原因のひとつによく挙がるのが、実家や義実家との「衛生観念の違い」。年をとると細かな部分に目が届かなくなることがあり、子ども連れで帰省するのをためらっているという声をよく聞きます。今回お話を伺ったのも、そんな悩みを抱えている現役主婦。彼女がとるべき選択肢には、どのようなものがあるのでしょうか。夫婦カウンセラーのアドバイスとともにお届けします。

 ◇ ◇ ◇

小食だと思われるほど食が進まない

「もう二度と、義実家で食事をしたくないんです!」

 そう言って声を荒らげるのは、関東在住の本堂美也さん(仮名・30代)です。夫とは数年前に恋愛結婚。結婚以来、義実家に何度か帰省していますが、そのたびに「おそろしい目」に遭っているといいます。

「義母は、とにかく衛生観念がないんです」

 美也さんが言うように、義母の台所はいつ行ってもホコリだらけ。床には、こぼしたまま拭き取ることなく放置され、カピカピになった調味料の跡がこびりついているそうです。

「持っていったお菓子を冷やそうとして冷蔵庫を開けた瞬間、絶句しました。これ、いつの!? って思うくらい色の変わった豚肉や、粘り気のある鶏肉、賞味期限を2週間も過ぎた牛乳なんかが、びっしり詰まっていたんです」

 もちろん、冷蔵庫の中が長年掃除された気配はなく、パッキン部には黒ずみも。基本的に人の良い義母は一生懸命、手料理を作ってもてなしてくれます。しかし、冷蔵庫内を見て以来、美也さんは食が進まず、義父母には「小食」として通っているそうです。

「不思議そうにこちらを見る夫に、ふたりきりになったタイミングで話したのですが『数日のことなんだから、それくらい我慢してよ』と……。できれば外食したいのですが、夕方5時には駅前の店が閉まってしまうような田舎町で、宅配のピザやお寿司も圏外なんです。昨年の帰省時には、何かにあたったようでお腹を壊してしまい、帰宅後3日間、ベッドとトイレの往復生活。せっかくのお正月なのに、心休まる時間が1秒たりともありませんでした。この先も帰省のたびに同じようなことが続くと思うと、夫との離婚さえ頭をよぎります……」

食べ物は持参が吉

 義実家の衛生状態に、強い不安を感じている美也さん。こうしたケースについて、夫婦カウンセラーの原嶋さんは「我慢を前提にしてはいけない」と話します。

「体調を崩すほどの不衛生さは、単なる価値観の違いではなく、健康問題です。まず必要なのは、夫がこの問題を“夫婦の問題”として受け止めることです」

 そのうえで大切なのは、帰省前の話し合いだといいます。

「『あなたの実家が苦手』ではなく、『私はあの環境で食事をすると体調を崩してしまう』という形で、事実と体調を軸に伝えること。ここで我慢してほしいと言われるなら、それは妻の健康よりも、実家との波風を立てないことを優先している状態です」

 それでも理解を得られない場合は、「行かない」という選択も正当だと原嶋さん。

「夫婦とは本来、互いの安全と尊厳を守る関係です。体を壊すとわかっている場所に行くことを強いられるのは、健全な夫婦関係とはいえません。美也さんが自分の身を守る決断をすることは、決してわがままではないのです」

 一方で、どうしても帰省を続けたいのであれば、夫婦で協力して行うことが重要だといいます。

「『安全に過ごすための暫定的な対処』として、夫が主体となって準備する、あるいは持参するなど、夫婦で役割を決めたうえで選択する必要があるでしょう」

(和栗 恵)