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京都の古美術店店主に聞くお正月の器選び 縁起を重ねた明治伊万里に合う料理とは
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師走を迎え、慌ただしくも心躍る年の瀬。京都では冬の味覚が市場に並び、新年を迎える準備が始まります。お正月の食卓を彩る器には、どんな縁起の良い文様が込められているのでしょうか? 全国通訳案内士として訪日外国人を各地へ案内するうちに、陶磁器に魅了された豊嶋操さんが、京都・祇園で古美術店「観山堂」を営む八木美由紀さんに話を伺いました。
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年末年始の京都に欠かせない食材と伝統行事
年末が近づくと、京都の街には独特の風情が漂い始めます。
――長年京都にお住まいですが、冬になり年末も近づいてくると「ああ、今年もこの時期が来たな」と思う食材はありますか?
「そうですね、立派な海老芋が市場に出回るようになると冬、そしてお正月もそう遠くないなぁと感じます。今年も、海老芋のから揚げを食べようかなとなりますね。あれね、一見地味だけれど手が込んでいるんですよ。下ゆでして、おだしで炊いてから揚げにするので、けっこう大変。でも、ねっとり感がたまらなくおいしいんですよねぇ。海老芋って晩秋から冬の食材という感じですけれど、お正月にも必須の食材なんです。京都のお雑煮には欠かせませんね」
――年末年始を京都で過ごすと、食べ物以外にも、この時期ならではの伝統をいろいろと学べそうですね。
「大晦日の八坂神社に行くとおもしろいですよ。をけら参りという行事があって、をけら(薬草の一種)で炊いた火を縄に移してくるくる回しながら、火が消えないようにして家まで持ち帰るんです。邪気を払って、無病息災を祈ります。
昔はその火でお料理していたのでしょうね。そして、年が明けると朝一番に大福茶を飲みます。湯呑みに梅干しと結び昆布を入れて、緑茶を注ぐんですけど、子どもの頃はそれを用意する係でした。子どもだからちっともおいしいと思えなくて、嫌々務めていました(笑)」
――梅に昆布は奥深い味わいで縁起がいいけれど、子どもにはちょっと渋い味かもしれませんね。大福茶のあとに召し上がるおせちにも、先ほどの海老芋は入っているのですか?
「煮物として入っています! 今回はユズ風味の海老芋から揚げを6寸の中皿に合わせてみましたが、どうでしょうか?」
