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長ネギの食べすぎには要注意? 「生食」に潜むリスクとは 適切な食べ方を栄養士に聞いた
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教えてくれた人:和漢 歩実

旬の長ネギ。これから寒い季節は、薬味や鍋料理にして食べる機会が増えるでしょう。風邪の予防に役立つと考えられてきた野菜ですが、生で食べすぎると、かえって逆効果になる可能性もあるといいます。長ネギについて、栄養士で元家庭科教諭の和漢歩実さんに伺いました。
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長ネギの栄養メリットとは
ネギは、奈良時代に伝わったとされ、古くから全国で栽培されてきた歴史ある野菜です。長ネギは「根深ネギ」と呼ばれ、関東でよく食べられます。主に白い部分を食べますが、緑色部分は必要時に体内でビタミンAに変わり、鼻や目の粘膜を保護し、免疫機能を高めるβカロテンが豊富。白い部分は、辛味成分のアリシン(硫化アリル)が多いことが特徴です。このほか、ビタミンCやカリウムなどのミネラル、食物繊維も含まれています。
とくにアリシンは、消化液の分泌を促して食欲を増進、ビタミンB1の吸収を助け疲労回復、血行促進の働きが期待されています。このほか抗菌や殺菌作用もある優れた健康成分で、寒さや忙しさで体調を崩しやすいこれからの季節に、摂取しておきたいもののひとつです。
昔から、風邪の予防や、風邪をひいたときにネギを食べると良いといわれるのは、アリシンの殺菌効果や疲労回復効果に期待するものと考えられます。アリシンは熱に弱い性質があるので、栄養メリットをいかしたい場合は、生で食べると良いでしょう。
辛味成分のアリシンは刺激が強い
ただし、生の長ネギを食べすぎることには気をつけてください。アリシンは健康に役立つ反面、刺激が強い成分でもあるため、一度に大量に食べると胃腸の粘膜が荒れて、胃痛や腹痛などを起こすリスクがあるといわれています。
殺菌作用も強いので、過剰に摂取することで腸内にいる善玉菌にも影響を及ぼし、腸内環境のバランスが乱れるケースが考えられます。下痢や便秘などの症状を引き起こす可能性もあるため、長ネギを生で食べる場合は注意してください。薬味として食べる程度が良いでしょう。
長ネギに限らず、どんな食材にもいえますが、体に良いからといって、それだけを過剰に食べないように心がけてください。
長ネギは加熱で甘味が増す
長ネギを加熱するとアリシンが減るため、辛味が和らぎ、甘味が引き立ちます。じっくり焼いたり煮込んだりすることで、とろっとした食感になり、食べやすくなります。味わいを楽しみたい料理では加熱、辛味のある生で栄養を生かしたい場合は薬味として使い分けるのがおすすめです。
緑色の葉の部分を食べないという話も聞きますが、栄養面からいうともったいないです。前述のように、βカロテンをはじめ、新鮮な長ネギの葉からはゼリー状の液体が出てくることがあり、水溶性食物繊維のフルクタンも含まれています。生食は苦手と感じたら、ほかの野菜や肉などと一緒に油と炒めると、βカロテンの吸収率が上がり、食べやすくなります。
手軽に使えて、風邪予防や疲労回復に役立つ長ネギ。年末年始の忙しい時期こそ、上手に食卓へ取り入れていきたいですね。
(Hint-Pot編集部)
和漢 歩実(わかん・ゆみ)
栄養士、家庭科教諭、栄養薬膳士。公立高校の教諭として27年間、教壇に立つ。現在はフリーの立場で講師として食品学などを教える。現代栄養と古来の薬膳の知恵を取り入れた健やかな食生活を提唱。食を通して笑顔になる人を増やす活動に力を注いでいる。
ブログ:和漢歩実のおいしい栄養塾