食
長ネギの青い部分にある“ネバネバ”の正体は? 栄養成分と保存方法を解説
公開日: / 更新日:
教えてくれた人:和漢 歩実
すき焼きなど鍋料理においしい長ネギ。通年で出回っているため季節感を与える存在とはいえませんが、実は今が旬です。香味野菜としておなじみすぎるため、白い部分が淡色野菜ですが、青い部分が緑黄色野菜に分類されることをご存じない方も多いのでは? もちろん両方の部分に栄養がたっぷり含まれているそうです。栄養士の和漢歩実さんに話を伺いました。
◇ ◇ ◇
古くからなじみのある長ネギ 白い部分は茎ではなく葉の部分
ネギの原産地はシベリア地方または中国といわれています。日本にも古くから存在しており、奈良時代の「日本書記」(720年)では、ネギを「秋葱(あきき)」と記しているそうです。
ユリ科の植物で花も咲くネギ。関東地方より東の地域で食されてきた長ネギは、「根深ネギ」や「白ネギ」と呼ばれます。主に食べている白い部分は茎ではなく葉の部分。色が白い理由は、日の光に当たらないよう土寄せをしながら育てているためです。
今では通年で店頭に並びますが、本来の旬は冬。加熱すると甘味が増し、とろけるようなやわらかさになるのが特徴です。
「薬味」としても使われる長ネギの栄養価
長ネギの白い部分は葉鞘(ようしょう)部と呼ばれ、ビタミンCやアリシンを多く含むのが特徴です。
長ネギ1本の目安は100~150グラム。日本食品成分表2020年版(八訂)によると、長ネギ100グラムあたり(根深ネギ、葉、軟白、生)のエネルギー量は35キロカロリー、ビタミンCは14ミリグラムです。その他にも食物繊維やカリウム、カルシウムなどが含まれています。
アリシンは硫化アリルの一種で、長ネギのツーンとした刺激臭と辛味の成分です。疲労回復や血行促進、殺菌などが期待され、糖質エネルギー代謝に関係するビタミンB1の吸収率を上げるといわれています。ビタミンCが比較的多いことと併せて、風邪や免疫力が気になる寒い時期におすすめの食材といえるでしょう。
長ネギの青い部分は食べる? ネバネバしたゼリー状のものは何?
一方で長ネギの青い(緑色)部分には、βカロテン、カルシウム、ビタミンKが多く含まれています。
厚生労働省の基準によると、可食部100グラムあたりのβカロテンが600マイクログラム以上あるものが「緑黄色野菜」。つまり、長ネギの白い部分は淡色野菜ですが、青い部分は緑黄色野菜に分類されるのです。1本に2つの分類が存在する面白い野菜ですね。
青い部分にある独特のネバネバは水溶性食物繊維(フルクタン)です。フルクタンは血糖値やコレステロールの調整をサポートし、腸内を整える作用が期待できます。青い部分を捨ててしまうのはもったいない話というわけです。栄養たっぷりなので、薬味や汁物の具材に使ったり、肉料理と一緒に炒めたりして食べると良いでしょう。
新鮮な長ネギの見分け方は? 保存のコツ
長ネギを見分けるポイントは“巻き”にあります。フカフカしていないものが新鮮ですので、しっかり巻かれているものを選びましょう。また白い部分が長くてツヤがあり、青い部分との境目がはっきりしているものがおすすめです。
保存する際はまず、外側の皮を1枚むきます。そして根元を取って短くカットし、ラップに包んで冷蔵庫へ。または、好みの長さに切ったものを小分けにして、冷凍用保存袋に入れて密封すれば冷凍保存もできます。
収穫されたままの状態である泥付きは、そのまま土の中に白い部分を埋めておくと日持ちします。埋められる庭がない場合は、濡らした新聞紙などに包んで冷暗所で保存しましょう。
風邪予防にもぴったりの長ネギ 旬の季節に楽しみましょう
ビタミンCやアリシンなどの栄養成分をいただきたい時は、生食がおすすめです。一方で、トロトロになるまで煮込んで甘さを堪能するのも、この季節ならではの楽しみ方ですね。
スーパーマーケットではあまり見かけませんが、もし「ヒゲ根」のついている長ネギが購入できたら、よく洗って天ぷらや素揚げにして食べても良いでしょう。キツネ色になるまで油で揚げて、軽く塩を振るとおいしいです。
長ネギに含まれている栄養素には、疲労回復や血行促進、殺菌などが期待できるので、風邪や免疫力が気になる寒い季節におすすめの野菜です。選び方や保存のコツをおさえて、旬の長ネギをおいしくいただきましょう。
ネギのシャキシャキ感を残すのがコツ 箸が止まらなくなる全農鍋レシピが話題に
(Hint-Pot編集部)
和漢 歩実(わかん・ゆみ)
栄養士、家庭科教諭、栄養薬膳士。公立高校の教諭として27年間、教壇に立つ。現在はフリーの立場で講師として食品学などを教える。現代栄養と古来の薬膳の知恵を取り入れた健やかな食生活を提唱。食を通して笑顔になる人を増やす活動に力を注いでいる。
ブログ:和漢歩実のおいしい栄養塾