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お吸い物の貝の身は食べてOK? 殻の置き場所で「マナー違反」になることも… 気になる作法を栄養士が解説

公開日:  /  更新日:

著者:Hint-Pot編集部

教えてくれた人:和漢 歩実

貝のお吸い物(写真はイメージ)【写真:写真PIXTA】
貝のお吸い物(写真はイメージ)【写真:写真PIXTA】

 年末年始などハレの日の食卓を彩るお吸い物。かつお節や昆布などでとっただしに、塩やしょうゆを加えたシンプルで上品な味わいの汁ものです。具材に貝類が入っていることがありますが、殻つきの場合、食べたらどこに置くべきか迷うこともあるでしょう。また、お吸い物に入った貝の身を食べることがマナー違反といわれることもありますが、実際はどうなのでしょうか。栄養士で元家庭科教諭の和漢歩実さんに伺いました。

 ◇ ◇ ◇

栄養価が高い貝類は積極的に食べたい食品

 お吸い物に入っている貝は、だしとして使っているので、外食先では食べないほうが良いという見解もありますが、食べて問題ありません。貝類は脂肪分が少なく、低カロリーで、ミネラルが豊富。日本人に古くから親しまれている栄養価が高い食べ物です。

 アサリやハマグリには、貧血予防の鉄やビタミンB12、味覚を正常に保ち免疫機能を維持するのに欠かせない亜鉛が含まれています。また、肝機能を高めたり、血圧の上昇を抑え、コレステロールや血糖値を下げたりするのに役立つ健康成分のタウリンも豊富です。

 とくにアサリは、造血やDNAの合成に関わるB12が多い特徴があります。ほかにも、シジミにはビタミンB12や亜鉛、鉄をはじめ、肝機能の働きをサポートするオルニチンという成分が含まれています。

 年末年始で飲酒の機会も増える時期だからこそ、貝類は積極的に摂取したい食品といえるでしょう。

食べ方でマナー違反になることも

 マナー違反になるのは、お吸い物の貝の「食べ方」にあります。家庭内ならとくに気にしなくても良いかもしれませんが、和食店など外食先では、知らずにいるとマナー違反になりかえないので心得ておきましょう。

 お吸い物の貝は、いきなり食べようとすると、汁をこぼしやすいので注意してください。また、汁の中を箸でかき回して具を探り出すのは「探り箸」という箸のマナー違反にあたります。うっかりやらないようにしましょう。

 ポイントは、椀の中の汁を、ある程度飲んで減らしてから、貝を食べることです。汁は、箸先を椀の中に入れたまま飲みましょう。椀の外に出したままでは、汚れた箸先を周囲の人に見せてしまうことになります。

 身をはがす際は、箸だけで無理にはがそうとするとカチャカチャと音を立ててしまうので、好ましくありません。汁を飲んだら、いったん椀を置きます。箸を持たないほうの指先で椀の中の貝の殻をそっと支えて、箸で身を取って食べるとスムーズです。椀から貝殻を出して身を取って食べるのはNG行為です。

 食べ終わった貝の殻は、そのまま椀の中に残しておきます。椀から取り出して、蓋などの上に置くのは、マナー違反にあたるのでやめましょう。食べ終わった殻が同席の方の目に入り、見た目がよくありません。また、殻でお店の漆器を傷つけてしまう恐れもあります。

 丁寧な所作を心がけて、貝のお吸い物の栄養を丸ごと楽しみたいですね。

(Hint-Pot編集部)

和漢 歩実(わかん・ゆみ)

栄養士、家庭科教諭、栄養薬膳士。公立高校の教諭として27年間、教壇に立つ。現在はフリーの立場で講師として食品学などを教える。現代栄養と古来の薬膳の知恵を取り入れた健やかな食生活を提唱。食を通して笑顔になる人を増やす活動に力を注いでいる。
ブログ:和漢歩実のおいしい栄養塾