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「トイレで列を抜けただけなのに」 初詣の行列トラブル 弁護士の見解は

公開日:  /  更新日:

著者:Hint-Pot編集部

教えてくれた人:坂本 尚志

混雑しがちな初詣(写真はイメージ)【写真:PIXTA】
混雑しがちな初詣(写真はイメージ)【写真:PIXTA】

 初詣や初売りなど、年末年始は行列に並ぶ場面が増える時期です。寒さの中で長時間待つことも多く、トイレに行く間、知人に場所を取ってもらった、あとから合流しただけ――など、つい「少しだけなら」と考えてしまう人もいるかもしれません。そうした行動が、思わぬトラブルにつながることもあります。年末年始に起こりやすい行列トラブルについて、弁護士の坂本尚志先生に聞きました。

 ◇ ◇ ◇

トイレのために数分、行列を抜けたらトラブルに

 元日の朝、母と初詣に出かけました。有名な神社ということもあり、参道には長い行列ができていました。

 寒い中で並んでいると、母も私も途中でトイレに行きたくなりました。列を抜ける前に、後ろに並んでいた知人に声をかけ、「戻ってくるので、少しだけ場所を見ておいてもらえませんか」とお願いしました。

 用を済ませて戻ると、知人の前に入れてもらいました。自分としては、ほんの数分、列をはずれただけのつもりです。

 ところが、その様子を見ていた前後の人から「それは割り込みじゃないですか」「みんな並んでいるのに」と、強い口調で言われてしまいました。知人が場所を取ってくれていたとはいえ、周囲から見れば、あとから親子で割り込んだように見えたのかもしれません。

 その場では謝りましたが「本当に自分が悪かったのだろうか」「少しの間、知り合いに待ってもらうのもダメなのだろうか」と、モヤモヤが残りました。行列でのこうした行動は、法的に問題になることがあるのでしょうか。

行列への割り込みは、どこから問題になる?

 この点について、弁護士の坂本氏は「多くの場合はマナーやルールの問題として扱われる」としたうえで、次のように説明します。

「行列に並ぶこと自体は契約行為ではありませんが、不特定多数が利用する場では、一定の秩序が前提になります。周囲の人の利用を妨げる行為は、トラブルになりやすいといえます」

 本人の認識と、周囲からの見え方が食い違うケースも少なくありません。

「『一時的に離れただけ』『知人に待ってもらっただけ』という意識でも、第三者から見れば割り込みと受け取られることがあります。とくに初詣や初売りのような混雑時は、暗黙のルールが強く働きます」

 また、行列をめぐっては、軽犯罪法に関連する規定もあります。

「軽犯罪法には、『威勢を示して公衆の列に割り込む行為』を処罰の対象とする規定があります。ただし、これは一定の場合の列への割り込みに限定されるうえ、大声で怒鳴る、押しのけるなど、威圧的で秩序を乱す行為を想定したものです」

 今回のように、静かに合流した場合や、一時的に列をはずれて戻っただけの行為が、ただちに刑事罰の対象になるわけではありません。

「注意されたにもかかわらず強引に割り込んだり、口論になったりすると、トラブルが大きくなる可能性はあります。状況しだいでは、係員に対応を求められたり、退去を求められたりすることもあります」

 さらに、施設や店舗ごとのルールにも注意が必要です。

「初売りやイベントでは、『本人が並んでいなければ無効』『途中離脱は不可』といった独自ルールが設けられていることもあります。その場合は、そのルールが優先されます」

 列を離れる必要がある場合は、最初から並び直す、係員やスタッフに確認するなど、ひと呼吸置いた行動が、余計なトラブルを避けることにつながりそうです。

※本記事に記載された事例は、特定の事実関係に基づくものではなく、想定ケースとして構成されたものです。実在の相談・事件・人物等とは一切関係ありません。

(Hint-Pot編集部)

坂本 尚志(さかもと・たかし)

弁護士。清陵法律事務所所長。プロボクサー。東京大学法学部卒業。詐欺・消費者問題に注力。https://seiryo-law.com/