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「隣の人のいびきで一睡もできなかった」 夜行バスの悲劇に弁護士が見解
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教えてくれた人:坂本 尚志

年末年始は、帰省や旅行で夜行バスを利用する人が増えます。価格を抑えられる一方、見知らぬ人と長時間、同じ空間で過ごすことになります。すると、隣の席の人のいびきがうるさくて眠れなかったというトラブルが起きることも。「これは仕方のないことなのか」「相手に責任はないのか」と、疑問に思う人もいるかもしれません。年末年始に起こりがちな夜行バスのトラブルについて、弁護士の坂本尚志先生に聞きました。
◇ ◇ ◇
いびきは仕方ないこと?
年末年始に、帰省のため夜行バスを利用しました。満席で、隣の席には知らない人が座っていました。
出発してしばらくすると、隣の人が眠り始め、大きないびきをかくようになりました。最初は気にしないようにしていましたが、音がしだいに大きくなり、ほとんど眠れません。
途中の休憩で、乗務員に注意してほしいとお願いしましたが改善されず。結局、ほぼ一睡もできないまま到着しました。
翌日は頭痛と吐き気があり、体調もすぐれません。仕事や予定にも影響が出てしまいました。
いびきは仕方ないことかもしれませんが、ここまで体調を崩した場合でも相手になんの責任も問えないのだろうかと、モヤモヤが残りました。
原則として、刑事・民事の責任は問われない
こうしたケースについて、弁護士の坂本氏は、次のように説明します。
「結論から言うと、夜行バスでのいびきについて、原則として刑事責任が問われることはありません。また、民事上の損害賠償が認められる可能性も、非常に低いと考えられます」
理由は、いびきの性質にあります。
「いびきは、本人の意思で完全にコントロールできるものではなく、生理現象に近いものです。故意に他人に迷惑をかけようとしたわけではないため、犯罪として評価されることは通常ありません」
うるさくて眠れなかった結果、体調を崩したという事情があっても、民事責任が認められるハードルは高いといいます。
「損害賠償を求めるには、相手の行為に違法性や過失があり、その行為と体調不良との因果関係が必要です。しかし、夜行バスという環境自体に一定の騒音や不快感が生じる可能性は、織り込まれていると考えられます」
そのため、「いびきが原因で体調を崩した」という主張だけで相手個人に責任を問うことは、現実的に難しいといいます。
「この種のトラブルは、個人間の責任問題というより、運送会社の対応の問題として扱われるのが一般的です。席の移動を相談したり、乗務員に状況を伝えたりすることが現実的な対応になります」
夜行バスは、価格や利便性と引き換えに、一定の不便さや不快感が生じる可能性を含んだ移動手段でもあります。「相手に責任を問えるか」という視点よりも、「どう対処すれば自分の負担を減らせるか」を考えることが、結果的にトラブルを大きくしないことにつながりそうです。
※本記事に記載された事例は、特定の事実関係に基づくものではなく、想定ケースとして構成されたものです。実在の相談・事件・人物等とは一切関係ありません。
(Hint-Pot編集部)