海外ニュース
「えっ、これもパンに挟んで食べるの?」 イギリスでフードジャーナリストが衝撃 「あまりパッとしない英国料理の中では最高傑作」と感じる食べ物とは
公開日: / 更新日:
「言わないとなにも入らない」 旅行者泣かせの注文ルール
サンドイッチバーの魅力は、具材だけではありません。パンもまた、食パンや黒パン、胚芽パン、全粒粉パン、バゲット、ベーグル、チャパタなどなどから自由に選べ、トーストするかどうかまで指定できます。とはいえ、具材の種類と分量、パンの種類に焼き方、バターの有無まで、客が指定しなければいけないので、旅行者にはなかなかハードルが高いのも事実です。
「パンにチーズだけ挟んで。バターも塗らないでね」という人もいれば、「タンドリーチキンにアボカドたっぷり。パンにはバター、マヨネーズ、マスタードを塗って。エビも入れようかな。あ、パンはトーストしてね」という人もいるので、人が殺到するランチタイムにそれをどんどんさばかなければいけないお店の人は大変です。
一方で、客が注文しないものは、キュウリ1切れ、レタス1枚まで一切無断で入れることはしません。だから、「ハムサンドひとつください」とだけ言ってボーッと待っていると、生のパンにバターも塗らずハム1枚だけ挟んだものを渡されて泣く羽目になります。
厚さ5センチの大ボリューム 庶民に愛されたサンドイッチバーの全盛期
サンドイッチバーのメニューはどこでも同じというわけではなく、お店によって具材の種類や味付けは随分と異なります。サンドイッチバー全盛の頃はみんな、自分のお気に入りの1軒があり、お昼になるとそこへまっしぐらというのがお決まりでした。
具材をたくさん入れたサンドイッチは厚さ5センチくらいあるので、日本のコンビニサンドとは比べ物にならないボリュームで、ひとつ食べればお腹いっぱい。安価でおいしくて、長年にわたり庶民のランチの強い味方でした。
ところが、地価の高騰とか、後継者問題とかさまざまな理由で、個人経営のサンドイッチバーの多くが姿を消してしまいました。まだ残っているお店には頑張って欲しいと心から思います。
日本のおにぎり店と似ている? 消えゆくサンドイッチ文化への想い
最近は、サンドイッチをスーパーやカフェで買うのが一般的になりましたが、それらはすべて既製品でパックされているものです。そこには、具材の量を調整してもらったり、とんでもなく突飛な具材の組み合わせを試したりという楽しみはありません。
三角形のパッケージに収まったサンドイッチは衛生的ですが、パンは大抵ちょっと乾燥しているし、具材の組み合わせもありきたり。作り置きだから添加物もなんだか心配です。
毎日、フレッシュな具材を店のキッチンで作り続け、客のわがままにも最大限対応してくれて、職場や家の近所にたくさんあったサンドイッチバーを、イギリス人の大半はとても懐かしく思っているはずです。
具材の種類が豊富で、好きに選べるサンドイッチバーと、ここのところ大流行中の日本のおにぎり専門店とは、料理としてはまったく別物だけれど、システムとしてはなんとなく似ているように感じます。
ベースがパンかごはんかの違いはありますが、そこに好きな具材を選んで挟んでもらう楽しさとおいしさが、双方の人気の理由ですよね。日本の個人経営なおにぎり店が、イギリスのサンドイッチバーのように廃れてしまわないことを、切に祈るばかりです。
(斎藤 理子)
斎藤 理子(さいとう・りこ)
出版社で雑誌編集に携わったあと、イギリス・ロンドンなど海外に長年在住し、世界中をめぐって各地の食文化を体験。帰国後は日本国内外の食材生産者から、ミシュラン三つ星レストランや街角の立ち飲み店まで、幅広い食の現場を取材・執筆している。主な著作に「イギリスを食べつくす」(主婦の友社刊)、「隣人たちのブリティッシュスタイル」(NHK出版刊)がある。また、「アル・ケッチァーノ」の奥田政行シェフによる連載記事を編集・監修した「田舎のリストランテ頑張る」(マガジンハウス刊)の編著者でもある。2011年には、イギリス政府観光庁よりメディアアワードを受賞。現在、やまがた特命観光・つや姫大使を務める。