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無料期間でやめるつもりが解約金の請求が…自業自得? 弁護士が解説
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教えてくれた人:坂本 尚志

新生活のスタートを機に、心機一転してジムに通ったり、新しい習い事を始めたりする人は多いものです。とくに「初月無料」や「入会金ゼロ」といった魅力的なキャンペーンは、新しい挑戦を後押ししてくれます。しかし、いざ解約しようとした際に、思いもよらない高額な違約金を請求され、トラブルに発展するケースもあります。消費者として知っておくべき防衛策について、弁護士の坂本尚志先生に話を聞きました。
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新しい自分への投資、その後の誤算
新生活が始まる4月。新しい自分に生まれ変わろうと、私は駅前の最新型フィットネスジムの門を叩きました。
「今なら入会金無料、さらに最初の2か月は月会費もかかりません」
スタッフの爽やかな笑顔と、清潔感あふれる施設。そして何より「無料」という言葉に背中を押され、私はその場で入会を決めました。タブレット端末を渡され、流れるように規約をスライドして署名。新生活の忙しさもあって、細かい文字を読み込むことはしませんでした。
しかし、入会したのはいいものの、残業続きの毎日で、ジムに行く余裕などまったくありません。結局、一度も施設を利用しないまま2か月が経過。会費の引き落としが始まるタイミングで解約を申し出た私に、フロントの担当者は申し訳なさそうに、しかしきっぱりと告げました。
「お客様のプランは1年間の継続が条件となっております。今解約される場合は、違約金として残りの月数分の会費、または解約手数料として3万円を頂戴することになります」
無料期間だけで辞めるつもりだったのに、辞めるためには高額な支払いが必要になる。納得のいかない思いを抱え、私はジムをあとにしました。
契約書はきちんと確認を
新生活でのこうした契約トラブルについて、弁護士の坂本尚志氏は次のように注意を促します。
キャンペーンによる割引や無料期間を設ける代わりに、一定期間の継続利用を条件とする契約自体は、基本的には法的に有効です。これは「継続して通うことで利益を得る」という事業者側の経営判断と、「安く利用できる」という利用者の利益が合致しているとみなされるためです。
多くの人が陥りがちなのが、契約時の「確認不足」です。現在はタブレットでの電子署名が一般的ですが、一瞬でスクロールして「同意」を押す行為は、紙の契約書に実印を押すのと法的に同等の重みを持ちます。
困ったら一人で悩まずに消費生活センターや専門家に相談
しかし、どんな条件でも認められるわけではありません。法的に焦点となるのは、中途解約に伴う違約金の金額が、「平均的な損害」の額を超えていないかという点です。
消費者契約法では、事業者に生じる「平均的な損害」を超える額の違約金を定める条項は、その超える部分について無効と定めています。例えば、解約手数料として数十万円を請求したり、利用していない期間の会費を全額前払いさせたりといった極端なケースでは、法的手段によって減額や免除を主張できる可能性があります。
もし、解約時に不当に高額な違約金を提示されたり、解約を不自然に引き止められたりした場合は、一人で悩まずに消費生活センターや専門家に相談してください。新生活のスタートを気持ち良く切るためにも、契約時にはしっかり確認する冷静さを持つことが大切です。
※本記事に記載された事例は、特定の事実関係に基づくものではなく、想定ケースとして構成されたものです。実在の相談・事件・人物等とは一切関係ありません。
(Hint-Pot編集部)
坂本 尚志(さかもと・たかし)
弁護士。清陵法律事務所所長。プロボクサー。東京大学法学部卒業。詐欺・消費者問題に注力。https://seiryo-law.com/