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「やめて」と言ってもやめてくれない 妻の歯ブラシを使い続ける夫に募る不信感 「だんだんしんどくなってきて…」
公開日: / 更新日:
教えてくれた人:夫婦カウンセラー・原嶋 めぐみ

長年連れ添った夫婦でも、ふとした違和感が積み重なり、関係に影を落とすことがあります。妻の持ち物を“当たり前のように使う”夫の行動に、少しずつ不安を募らせていった女性。「やめて」と伝えても改まらないその態度に、戸惑いを感じています。日常の小さなずれが、なぜ大きな問題へとつながってしまうのでしょうか。夫婦カウンセラーに話を聞きました。
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「やめて」と言ってもやめてくれない夫
2人の子どもを育て上げ、現在は夫婦で穏やかな日々を送っている関東在住の健田菜々美さん(仮名・50代)。現在、人には相談しづらい悩みを抱えているといいます。
夫は家族思いで、穏やかな性格。子どもたちにとってもいい父親で、夫婦関係も落ち着いていたといいます。ただ、振り返れば、ある時期から小さな変化があったと話します。
「40代後半くらいから、口臭や体臭を気にするようになりました。子どもたちに嫌われたくないからって、やたらと歯磨きやケア用品にこだわるようになったんです」
それ自体は悪いことではないと思っていたものの、その頃から違和感も増えていきました。
「私の基礎化粧品やシャンプーが、いつの間にか減っていることがあって。あれ? と思って聞くと、『ちょっと使っただけ』って。私のおしゃれ着洗い用の洗剤を見て、夫は『そんなのいらないだろ』って笑っていたのに、気づいたら自分の服をそれで洗っていて……。『自分の好きなものを買いなよ』と言っても『別にいいだろ』って言うんです」
「やめて」と言ってもやめてくれないことに不満を感じながらも、大きな実害はなかったため、あまり気にしないようにしていた菜々美さん。ところが、無視できなくなった出来事が起こります。
「ある朝、歯を磨こうとして歯ブラシを手に取ったら、濡れていたんです」
最初は、夫が間違えて触ったのかと思いましたが、その状態が何度も続き、不信感が募っていきました。そしてある日、夫が洗面所にいるときに様子を見に行くと、菜々美さんの歯ブラシで歯を磨いていたそうです。
驚いて「本気でやめてほしい」と伝えましたが、夫は曖昧に笑うだけで、行動を改める様子はありませんでした。
「さすがに気持ち悪くて……」
菜々美さんは新しい歯ブラシを購入し、使用後はケースに入れて、自室の引き出しの奥にしまうようにしました。すると、夫はそれ以降、自分の歯ブラシを使うようになったといいます。
「歯ブラシの一件以来、カミソリなどの衛生品はなるべく隠しているのですが、私の知らぬ間に、ほかにもいろいろなものを勝手に使われているのではないかと思うと、だんだんしんどくなってきて……」
これまで積み重なってきた小さな違和感が、歯ブラシの件をきっかけに一気に表面化。このまま夫婦として暮らしていけるのか、不安を感じているといいます。
「安心して生活できる関係かどうかを考える必要が」
妻の持ち物を繰り返し使い、「やめて」と伝えても改めない夫の行動に悩む菜々美さん。夫婦カウンセラーの原嶋めぐみさんは、まずこう指摘します。
「今回のポイントは、何を使ったかではなく『やめてほしいという意思が尊重されていない』ことです。家族であっても、個人の持ち物や衛生に関わる部分には明確な境界線があります。それを軽く扱い続ける関係は、いずれ別の場面でも同じ問題が起きやすいです」
何度もお願いしているにもかかわらず、はぐらかされていることに、原嶋さんも危機感を覚えています。
「価値観の違いそのものよりも“相手の嫌がることをやめない姿勢”のほうが、関係に与える影響は大きいものです。今後も同じことが続くのか、別の場面でも同様に境界線が守られないのか。そこを見極めたうえで、安心して生活できる関係かどうかを考える必要があるでしょう」
そして最後に、こうつけ加えます。
「長く一緒に暮らしてきた相手だからこそ、小さな違和感を見過ごしがちです。ただ、その積み重ねが大きな不信感に変わることもあります。『これくらいなら』と我慢を重ねるのではなく、自分がどこまでなら受け入れられるのかをはっきりさせることが、これからの関係を考えるうえで大切です」
(和栗 恵)