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「度が過ぎる行為は怒っていい」の声も 太宰治の墓参トラブル急増 市が異例の呼びかけに踏み切った理由
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作家・太宰治の墓参をめぐり、異例の注意喚起が行われました。墓所がある東京都三鷹市の禅林寺では、今年4月以降、これまでにないペースでトラブルが発生。市が公式Xで呼びかけを行う背景には、看過できない問題がありました。三鷹市芸術文化課の齋藤龍彦さんにお話を伺いました。
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遺族の声を代弁した異例の投稿
作家・太宰治の墓参をめぐり、異例の注意喚起が行われました。太宰治の誕生日で、遺体が発見された日でもある6月19日は、「桜桃忌(おうとうき)」と呼ばれ、墓所がある東京都三鷹市の禅林寺では毎年、法要が行われています。
これにあわせて6月には、全国から多くのファンが墓参に訪れますが、三鷹市は公式Xで参拝のマナーについて呼びかけました。
投稿に添えられた文書には、供え物の持ち帰りを求める太宰治のご遺族からのメッセージが記されていました。「墓に来られた皆様が気持ちよくお参りできますよう、お供え物についてはご遠慮いただくか、お持ち帰りいただき、お気持ちだけ頂戴できればとお心よりお願い申し上げます」と、理解を求めています。
この投稿には2万件の“いいね”が集まりました。リプライ(返信)には「度が過ぎる行為は怒っていいと思う」「お供物はすごく良いことなんだけど、結局管理者が処分しないといけなくなるので、お気持ちだけということで」「太宰の墓に供え物放置は、さすがに『人間失格』」といった多くの声が寄せられています。
「桜桃忌を否定しているわけではない」担当者の葛藤
齋藤さんによると最近、墓所に設置された案内看板を故意に汚したり貶めたりする行為が相次いで確認されているといいます。さらに、墓石そのものを汚損しようとする事態も起きていました。
「実は、このような被害は私が聞く限り初めてのことでした。そして何より、徐々に悪化したのではなく、この4月から急激に、立て続けに情報が入ってきたのです」
こうした状況を受けて、今回のXでの呼びかけにつながりました。ところが、この発信が「間違って伝わってしまっている部分があるようです」と齋藤さんは懸念します。
一部報道では、「桜桃忌」という行事そのものを市が否定し、禁止しているかのように捉えられていたからです。
「特殊な供え方もある桜桃忌の文化を否定するのは本意ではありません。訴えたかったのは、管理の限界と、4月以降に急増した悪意ある汚損から墓所を守りたいという願いです。桜桃忌当日になってしまうと清掃を行うのも難しくなるため、このタイミングで注意喚起を行いました」
三鷹市にとっての「太宰治」と、支えるボランティアへの思い
太宰の墓所があるのは禅林寺の境内であり、市が管理する施設ではありません。それでも市が動いたのは、太宰治が三鷹市ゆかりの文学者であり、街の誇りであるからにほかなりません。
齋藤さんによると、墓所は日頃からボランティアによってきれいに掃除されているといいます。静かに手を合わせる人々と、それを支える人たちの手によって、場所は保たれてきました。
「ファンの方の気持ちもございますし、その思いは大切にしたい。ただ、お墓をきれいに保つために尽力されている方々がいることも知っていただければ」
信頼と善意によって守られてきた、作家とファンを繋ぐ場所。一部の悪質な行為によってその形が変わってしまうことがないよう、一人ひとりが故人を偲ぶ節度を持つことが求められています。
(Hint-Pot編集部)