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コミュニケーションへの不安は“心の弱さ”ではない 「人見知り」と諦める前に知りたい脳のサインとは 医師が解説

公開日:  /  更新日:

著者:Hint-Pot編集部

教えてくれた人:飯島 慶郎

対人恐怖症になったらどう対処するべきなのか(写真はイメージ)【写真:PIXTA】
対人恐怖症になったらどう対処するべきなのか(写真はイメージ)【写真:PIXTA】

 新年度が始まり、1か月余り。生活のペースに少しずつ慣れてくる一方で、自分の言動が他者にどう映ったのかが気になり、人と接することへの不安が強まっている人もいるかもしれません。「ただの人見知り」では済まされない疾患が隠れていることがあるようです。近年、理解が広がりつつある「社交不安症(対人恐怖症)」について、出雲いいじまクリニック院長で精神科医の飯島慶郎先生にお聞きしました。

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社交不安症の特徴とは

 社交不安症の中核にあるのは、「他者から否定的に評価されることへの強いおそれ」。「失敗したら、どうしよう」ではなく「変な人だと思われたら、もう終わりだ」と、たった一度の失敗ですべてが破綻すると感じてしまう思考が特徴です。

 通常の緊張なら「次、頑張れば良い」と切り替えられる場面でも、社交不安症では、一度の失敗が人間関係そのものの破綻として体験されてしまう──この極端さこそが、人見知りなどの性格的な内気さとの境界を引く重要なポイントとなります。

 たとえば、仕事での会議や会話のあと、「あのときの声は震えていなかったか」「変な笑い方をしなかったか」などと一つひとつを思い出し、吟味しては落ち込む。夜寝る前にも、ベッドに入ると、気になる場面を何度も頭の中で巻き戻し、ひとりで自分を“再生”しては苦しむ。こういった反芻によって、不安や苦しさが続きます。

 本人は強い不安感を抱えていても、「気合が足りない」とか「人見知りだから」など、自分の性格上の問題としてとらえがちです。周囲も「普通に出社できている人」に見えるため、初期のサインが見過ごされやすくなります。

 身体の症状としては、動悸、発汗、手の震え、頭が真っ白になるなどが挙げられます。予期不安により、人前に立つ前夜から眠れない、会議の数日前から腹痛が続く、朝の通勤電車で動悸がしてホームで降りてしまうなどです。とくに女性は、のどのつかえ、冷え、めまいなどで現れることがあります。内科を転々としても異常が見つからないまま、長年放置されているケースも少なくありません。

5月の大型連休明けに不調が起こりやすい

 よく「五月病」といわれますが、4月を気力で乗り切った人ほど、5月の大型連休明けに不調が出やすいといえます。春は新しい職場や学校、人間関係の中で、「自分がどう見られるか」を意識する評価場面が増える時期です。そこに連休明けの反動や寒暖差による自律神経の乱れが重なることで、症状が表れやすくなります。実際に臨床現場でも、5月の大型連休明けから数週間は、初診や再受診の問い合わせが増える傾向にあります。

 こうした不調は、本人の弱さや甘えではなく、環境・心理・生理が同時に揺さぶられた結果として起こるものです。脳の不安回路が過剰に作動して起こる自律神経反応であり、気の持ちようでコントロールできるものではありません。

「自分だけがおかしい」と感じる必要は、まったくありません。甘えと片づけず、適切なケアにつなげることが早期回復の近道です。