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リトアニア大使「日本が好きだからこそ、少し寂しい」 20年以上にわたって関わってきたからこそ感じる日本社会の変化とは

公開日:  /  更新日:

著者:Hint-Pot編集部

長年日本に関わってきたからこそ語れる本音

 ジーカスさんによれば、リトアニアはヨーロッパのなかでもとくに親日的な国だそうです。

「日本の文化や日本そのものは、リトアニアでは非常に人気があるんですよね。若い世代はクールジャパン、漫画やアニメに夢中ですし、私の世代は歌舞伎や茶道といった伝統文化に興味を示す人が多い。みんな日本を理解しようと頑張っているんです。ヨーロッパのなかでは、リトアニアは一番日本に憧れている国だと思います」

 だからこそ、ジーカスさんの言葉には、単なる称賛だけでなく、長年日本と関わってきた研究者としての率直な視点も交じります。研究者として日本を見ていた頃と、外交官として向き合う今の日本とでは、見える景色が大きく変わりました。

「日本の企業や政治、どちらも決断するのに時間がかかるんですよね。今ではリトアニアも1人あたりのGDPは日本に迫る勢いです。ですので、リトアニアの企業もいろいろな国で活動するようになり、やりやすい国とやりにくい国がある。そのなかで、日本は割とやりにくい国になっています。これは大使館としても大きな課題でもあるんです」

 ただ、これは日本への単純な批判ではなく、長く日本を見続けてきたからこその、いわば叱咤激励でもあります。ジーカスさんが懐かしむのは、1990年代末から2000年代初頭に、留学生として日本を訪れた頃の空気でした。

「金沢大学や早稲田大学に留学していた時代の日本は、今よりも国際化されていませんでした。今の日本はすごく国際化されて、外国人にとっても良い環境になっています。

 一方で、当時の日本にはまだハングリースピリットがあった。高度経済成長期を経てバブル景気が崩壊したあとで、これから頑張ろうという精神がすごくあったんです。今はそれがだいぶなくなっていて、私はすごく寂しく思っているんですよね。日本が好きだからこそ、寂しいなという気持ちがあります」

 研究者として、リトアニアの大学にいるときは多くの留学生を受け入れてきた経験もありますが、近年は日本の若者が海外に出たがらない傾向を感じてもいるそうです。「韓国や中国の若者のほうが、世界を体験しようという気持ちが増えてきているのではないか」という言及も。

 それでも、ジーカスさんが日本に寄せる思いは変わりません。

「日本の素晴らしいところは、自分の伝統や文化を守りながら、現代社会と共存しているということ。これは、ずっと維持してほしいです」

 留学を経て、研究者として、そして大使として30年近く日本と向き合ってきたジーカスさん。これからも日本とリトアニアをつなぐ役割を担い続けていきます。

◇オーレリウス・ジーカス(Aurelijus Zykas)
リトアニア・カウナス出身。1990年のリトアニア独立後、高校時代に日本語学習を開始。1998年に金沢大学、2002年に早稲田大学商学研究科へ留学し、在日リトアニア大使館にも勤務。帰国後、天皇皇后両陛下のリトアニア訪問時に当時の皇后陛下の通訳を務める。2008年から2018年までヴィタウタス・マグヌス大学でアジア研究センター所長を務め、2022年に駐日特命全権大使に就任。X(ツイッター)でも人気を集めている。

(Hint-Pot編集部)