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「家族に『なぜ止めなかったのか』という声も…」 SNSの遭難事故を見て不安に 登山に夢中な夫を止めたい60代妻 夫婦カウンセラーがアドバイス
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教えてくれた人:夫婦カウンセラー・原嶋 めぐみ

年齢を重ねても、好きなことを楽しみながら充実した時間を過ごしたいもの。一方、配偶者の趣味に危険が伴う場合、「何かあったら」と心配になることもあるでしょう。今回お話を伺った60代女性も、退職後に登山へ夢中になった夫を心配しています。とくに不安なのは、夫が一人で山へ出かけること。登山をやめてほしい妻と、「ようやく見つけた趣味」と譲らない夫。夫婦カウンセラーの原嶋めぐみさんに、夫婦それぞれの趣味との向き合い方について伺いました。
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SNSで目にする遭難事故 夫の登山が心配でたまらない妻
関東在住の横田鈴音さん(仮名・60代)。60代後半の夫が趣味の登山をやめてくれないことに、不安を抱えています。
もともと仕事中心の生活を送り、これといった趣味がなかったという夫。3年前、友人に誘われて富士山に登ったことをきっかけに、登山に夢中になりました。今年春に嘱託勤務を終えてからは、山へ出かける機会がさらに増えたといいます。
友人と一緒に登ることもありますが、予定が合わないときには、一人で山へ向かうことも。鈴音さんが夫の登山を心配するようになった背景には、SNSの存在もありました。
「SNSで登山事故や遭難のニュースを見る機会が増えて、不安がどんどん大きくなってきたんです。コメントを読んでいると、遭難した本人だけでなく、家族に『なぜ止めなかったのか』というような声が向けられていることもあって……。夫にも同じことが起きたらと思うと怖いです」
今年のゴールデンウィーク、楽しそうに登山の計画を立てていた夫に、鈴音さんは思い切って「もう山に行くのはやめてほしい」と伝えました。ところが夫は納得せず、今でも話は平行線のままだといいます。
「夫は、『ようやく見つけた趣味なんだよ』と聞き入れてくれませんでした。せめて一人で行くのはやめてほしいとお願いしたんですが、『友人といつも予定が合うわけじゃないし、一人のときは危険な山には登っていない』と言って譲らないんです」
家族の意見も分かれました。社会人の娘は鈴音さんと同じく父親を心配し、登山をやめるよう説得。一方、大学生の息子は父親の味方をしています。
「息子には、『親父の趣味をやめさせるなら、母さんも推し活であちこち行くのやめなよ』と言われました」
鈴音さん自身、男性アイドルの“推し活”が趣味で、イベントなどへ足を運ぶこともあります。しかし、鈴音さんには、夫の登山と自分の趣味が同じものとは思えません。
「命にかかわる可能性がある登山と、アイドルの応援を一緒にするのはおかしいと思うんです。私は夫の楽しみを奪いたいわけではありません。ただ、何かあってからでは遅いから心配しているだけ。それでも、夫に登山をやめてほしいとお願いするのは身勝手なのでしょうか?」
「登山をやめて」ではなく、夫婦が納得できる方法を
警察庁のまとめによると、2025年の全国の山岳遭難者は3623人に上りました。年齢層別では、60歳以上が1723人と全体の47.6%を占めています。さらに、死者・行方不明者332人のうち、60歳以上は221人で66.6%を占めました。
また、単独登山で遭難した1367人のうち、死者・行方不明者は209人で15.3%。複数人で登山して遭難した場合の死者・行方不明者の割合は5.5%で、単独登山のほうが高くなっています。鈴音さんが、60代後半の夫、とくに一人で山へ向かうことを心配するのには、理由があるといえるでしょう。
一方、心配だからといって、夫がようやく見つけた趣味を一方的にやめさせることが解決になるとは限らないと、夫婦カウンセラーの原嶋めぐみさんは指摘します。
「鈴音さんが夫に『登山をやめてほしい』と思うほど心配になる気持ちはわかります。ただ、夫にとって登山は、長く仕事を続けたあとに見つけた大切な楽しみでもあります。まずは『登山をやめるか、続けるか』の二択にしないことが大切だと思います」
原嶋さんは、鈴音さんが本当に夫に望んでいることを、改めて考えてみてほしいといいます。
「鈴音さんは、夫から趣味を奪いたいわけではなく、『無事に帰ってきてほしい』のですよね。それなら、『山に行かないで』と伝えるだけではなく、『あなたに何かあったらと思うと怖い』『一人で山に行って帰ってこなかったらと思うと不安』と、自分が何を恐れているのかを夫に伝えてみてはいかがでしょうか」
そのうえで、夫が登山を続けるのであれば、家族の不安を少しでも減らす方法を夫婦で考えることも必要です。
「たとえば、どの山へ行くのか、どのようなルートを予定しているのか、何時頃に下山する予定なのかを事前に家族で共有する。登山届を提出することや、緊急時の連絡方法などについても確認しておく。『登山をやめるかどうか』ではなく、『続けるなら、家族が安心するために何ができるか』という話し合いに変えてみてください」
息子から自身の“推し活”を引き合いに出された鈴音さんですが、登山と推し活の危険性を比べるのではなく、互いに大切な趣味があることを認めたうえで、夫婦が納得できる方法を探していくことが必要なのでしょう。
(和栗 恵)