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不吉なイメージのヒガンバナ 怖い言い伝えがあるのはなぜ? お彼岸に咲く花に隠された先人の知恵

公開日:  /  更新日:

著者:鶴丸 和子

艶やかな赤色の花が特徴のヒガンバナ(写真はイメージ)【写真:写真AC】
艶やかな赤色の花が特徴のヒガンバナ(写真はイメージ)【写真:写真AC】

 2026年の秋のお彼岸は、9月20日(日)から26日(土)までです。ちょうどこの頃、開花を迎える植物のひとつに、ヒガンバナがあります。艶やかな赤色の花が特徴的ですが、子どもの頃に、摘んで持ち帰ると「火事になる」と叱られた経験がある人もいるかもしれません。なぜなのでしょうか。

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不吉なイメージが強いヒガンバナ

 ヒガンバナは文字通り、秋のお彼岸の時期に花を咲かせる植物です。白い花を咲かせる品種もありますが、一般的に赤い花で知られています。花が咲くときは葉をつけず、群生するため、遠くから眺めると一帯が真紅に染まったように見えます。

 別名は「曼珠沙華(まんじゅしゃげ)」。仏教の経典に登場する花で、サンスクリット語に由来するとされています。その一方、「死人花」「地獄花」「幽霊花」などの呼び名もあり、不吉な花というイメージが強いかもしれません。

 その背景には、ヒガンバナが墓地周辺に植えられてきたことが考えられます。ヒガンバナの地下にある鱗茎(りんけい)には有毒成分が含まれており、土葬だった昔は、ネズミなどから墓を守るために植えられていました。今でも墓地などで見かけることが多いのは、その名残といえるでしょう。

飢饉に備えた救荒植物だったことも

 墓地だけでなく、田んぼのあぜ道でもヒガンバナを見かけることがあります。これは、水田を動物から守る目的もありますが、飢饉などで食料の確保が難しい時代に、救荒植物として利用されたことに関係しているようです。

 ヒガンバナの鱗茎にはでんぷんが多く含まれており、有毒成分を取り除いたうえで、非常食として用いられていました。そのため先人たちは、あぜ道などに植えたヒガンバナを「持って帰ると火事になる」などと子どもたちに言い聞かせ、守り育てたとも伝えられています。

 ヒガンバナにまつわる不吉な言い伝えは、毒のある植物から子どもを遠ざけることはもちろん、飢饉に備えた大切な植物を守るといった、昔の人の思いが込められていたのかもしれません。

お彼岸にお墓参りをする理由

 そもそも「彼岸」とは、煩悩や迷いを離れた「悟りの世界」を意味する仏教の言葉です。私たちが生きる、煩悩や迷いのある世界は「此岸(しがん)」と呼ばれます。

 仏教では、極楽浄土は西の方角にあるとされています。太陽がほぼ真西に沈む春分や秋分の頃は、あの世とこの世が近づき、通じやすくなると考えられてきました。そのため、お彼岸にはお墓参りをして、先祖を供養する習慣が根づいたとされています。

 秋のお彼岸でお墓参りに行ったとき、地域によってはヒガンバナを見かける機会があるでしょう。真っ赤に咲き誇る花の群生。今まではなんとなく目にしていた景色も、そこに込められた先人たちの知恵や暮らしに思いをめぐらせてみると、新しい発見があるかもしれません。

(鶴丸 和子)

鶴丸 和子(つるまる・かずこ)

和文化・暦研究家。留学先のイギリスで、社会言語・文化学を学んだことをきっかけに“逆輸入”で日本文化の豊かさを再認識。習わしや食事、季節に寄り添う心、言葉の奥ゆかしさなど和の文化に詰まった古の知恵を、今の暮らしに取り入れる秘訣を発信。昭和好き。
インスタグラム:tsurumarukazu