ライフスタイル
小学生が隣の高級車に傷 修理費30万円を請求されたら? 親が負う責任を弁護士が解説
公開日: / 更新日:
教えてくれた人:坂本 尚志

車の乗り降りをする際、ドアを隣の車にぶつけて傷をつけてしまう、いわゆる「ドアパンチ」。大人が注意していても、子どもが勢いよくドアを開けてしまうこともあるでしょう。では、小学生の子どもが他人の車に傷をつけた場合、親が修理費を全額負担しなければならないのでしょうか。今回は、坂本尚志弁護士に法的な考え方を聞きました。
◇ ◇ ◇
高級車についた小さな傷
夫と小学4年生の息子と旅行へ出かけたときのことです。午後5時前に宿泊先のホテルに到着。駐車場にはすでに多くの車が止まっており、私たちは空いているところに車を停めました。
停車した瞬間、息子が勢いよくドアを開けてしまい、隣に止まっていた車にぶつかりました。「ちょっと何しているの!」と焦りましたが、後の祭りです。
慌てて確認すると、隣の車のドアには小さな傷がついていました。しかも、よく見ると高級車です。ただ、大きくへこんでいるわけでもなく、「もう、気をつけなさいよ」と息子を注意しながらも、正直なところ、私はそれほど大ごとには考えていませんでした。子どもがうっかりドアをぶつけてしまっただけですし、この程度なら、それほど修理代もかからないだろうと思っていたのです。
もちろん、そのまま立ち去るわけにはいきません。ホテルを通じて車の所有者に連絡してもらい、事情を説明して謝罪しました。ところが後日、相手から「修理には30万円以上かかる」と伝えられ、驚きました。
「えっ、子どもがちょっとドアをぶつけただけですよね?」
思わず聞き返してしまいました。
「子どものしたことなんですから、少しくらい大目に見てもらえないんでしょうか」
そう伝えましたが、相手は「子どもがやったことでも、車に傷がついたことに変わりはありません。元の状態に戻してもらいたいです」と譲りません。確かに、息子が傷をつけた以上、まったく弁償しなくて良いとは思っていません。ただ、息子はまだ小学4年生。わざと傷をつけたわけでもありません。
子どもが起こした事故でも、親が高額な修理費をすべて負担しなければならないのでしょうか。また、相手から提示された修理費について、その金額をそのまま支払う必要があるのでしょうか。
小学生が傷をつけたら、親が必ず責任を負う?
子どもが他人の物を壊した場合、「子どものしたことだから責任はない」ということにはなりません。ただし、誰が損害賠償責任を負うのかは、子どもの年齢や理解力、事故が起きた状況などによって異なります。
民法712条では、自分の行為について責任を理解するために必要な知能が備わっていなかった未成年者は、損害賠償責任を負わないとされています。何歳から責任能力が認められるかは一律に決まっておらず、その子どもの発達や行為の内容などから個別に判断されます。
一方、子ども本人に責任能力がない場合、民法714条により、原則として監督義務を負う人が賠償責任を負います。また、今回のようなケースでは、親自身が事故を防ぐための注意を怠っていなかったかが問題になる可能性もあります。「わざとではない」「子どもがしたこと」というだけで、賠償責任がなくなるわけではありません。
提示された修理費をそのまま払う必要は?
ただし、相手から30万円以上の修理費を提示されたからといって、その全額を当然に支払わなければならないわけではありません。傷を元の状態に戻すために必要な修理なのか、費用が相当なのかなどによって、賠償すべき金額は判断されます。
高級車の場合、車種や塗装、損傷した場所などによって、小さな傷でも修理費が高額になることはあります。まずは修理内容や見積もりを確認するとともに、加入している自動車保険や個人賠償責任保険などで対応できないか確認するといいでしょう。
※本記事に記載された事例は、特定の事実関係に基づくものではなく、想定ケースとして構成されたものです。実在の相談・事件・人物等とは一切関係ありません。
(Hint-Pot編集部)
坂本 尚志(さかもと・たかし)
弁護士。清陵法律事務所所長。プロボクサー。東京大学法学部卒業。詐欺・消費者問題に注力。https://seiryo-law.com/