ライフスタイル
「日帰りだから」と軽い気持ちは危険 秋の山で目撃された登山者の“危険な足元” 意外な落とし穴と正しい対策とは
公開日: / 更新日:
教えてくれた人:稲村 道子

秋の行楽シーズンを迎え、山歩きを楽しむ人が増える時期です。しかし、秋の山には気象の変化などさまざまなリスクが潜んでおり、装備にも十分な注意が必要です。なかでも、靴のトラブルによって動けなくなるケースがあとを絶たないといいます。テレビ番組の山岳ロケコーディネートや、国内ガイドとして活躍する国際マウンテンリーダーの稲村道子さんに、現場で目撃したトラブルと正しい足元の備えについてお聞きしました。
◇ ◇ ◇
目撃した「壊れた靴」の登山者と誤った応急処置
撮影の仕事である山を訪れた際、日帰り感覚で登ってきた登山者がいました。その際、靴が破損して困っているふたりと出会いました。
ひとりは長年使い込んで消耗した古い靴を履いており、もうひとりは途中で滑って転んだ拍子に靴のかかと側のソール部分が壊れてしまっていたのです。ふたりは自力でテープを巻いて応急処置をしていましたが、まったく意味のない場所に巻いていたため、歩行を続けられる状態ではありませんでした。
そのまま歩くのは危険なので一度全部やり直してあげてから、私はこう伝えました。
「危ないので、下山しましょうか」
経年劣化によってソールが突然はがれることも
久しぶりの登山で「昔買った古い靴」をそのまま履いて登ることは、滑落や遭難に直結する本当に大きなリスクをはらんでいます。
靴のソールに使われているポリウレタンなどの素材は、使用頻度にかかわらず経年変化によって劣化が進むんです。見た目は問題なさそうでも、空気中の水分などによって素材が劣化する「加水分解」が進み、いざ山道を歩いて荷重がかかった瞬間に、破損したり、ソール全体がベロリとはがれてしまったりすることがあります。
見るからに使い込んで消耗した古い靴を持ってきている人は、本当に危険です。整備されていない山道で突然ソールが剥がれたり壊れたりすると、踏ん張りが効かなくなって転倒や滑落につながってしまいます。
登る前の点検・買い替え基準・山中での応急処置
足元のトラブルを防ぎ、安全に登山するために、靴について知っておいてほしいポイントが3つあります。
1. 事前に靴をチェックする
靴箱から久しぶりに出した靴は、出かける前に必ず手でソールを引っ張ったり、自宅の周りを少し歩いて体重をかけてみたりして、亀裂や浮きがないか確認してください。使用回数が少なく表面がきれいに見えても、購入から「5年」が経過しているものは経年劣化が進んでいますから、買い替えの大きな目安になります。
2. 靴は専門店で選ぶ
ファッション性の高い靴や簡易的なスニーカーではなく、信頼できる専門店で購入するのが一番の予防策です。行く予定の山や、日帰りか宿泊かといった行程を店員さんに伝え、ご自身の足型にフィットするしっかりとしたハイキング・登山シューズをプロの目線で選んでもらいましょう。
3. 靴が壊れた場合の正しい応急処置法を覚える
万が一、山中でソールが浮いたりはがれたりした場合は、靴を履いたままつま先からかかとにかけて「ソールと靴本体をぐるぐる巻きにして一体化させる」ように、太めのダクトテープや強力なテーピングをしっかり巻きつけて固定します。側面やピンポイントに貼るだけでは歩行の力に耐えられません。そして、しっかり固定したあとは無理に目的地を目指さず、すぐに安全なルートで下山を開始することが鉄則です。
(Hint-Pot編集部)
稲村 道子(いなむら・みちこ)
国際マウンテンリーダー(UIML)/公益社団法人日本山岳ガイド協会 登山ガイドステージII。株式会社ウェック・トレック。10代から山岳手配に携わり、ヨーロッパ主要峰(アイガー、マッターホルン、モンブランなど)の登頂やキリマンジャロ5回登頂、6000メートル峰10座登頂を誇る。30代では年間250日も海外でハイキングガイドを務め、語学力(英語、ネパール語、ドイツ語、フランス語)を生かしてネパールでの山岳撮影や遠征隊のコーディネートにも従事。日本テレビ「世界の果てまでイッテQ!」「24時間テレビ」、NHK「グレートサミッツ」などの山岳番組現場に多数同行した実績を持つ。現在は「風花空ハイキング」を主宰。日本全国の山々でガイドを行い、初心者やミドル世代の女性へ向けた安全で実践的な山歩き指導に定評がある。
株式会社 ウェック・トレック
風空花ハイキング
