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仕事・人生

「火であぶられながら金属バットで叩かれているよう」 指のけがから始まった激痛 11軒の病院を受診した女性が明かす、診断までの苦悩

公開日:  /  更新日:

著者:古川 諭香

CRPSで音大進学を断念… 「恩師の言葉」で見つけた新たな夢

 病名が判明したあとも、蒼井さんの痛みは治まりませんでした。高校生の頃には、全身に激しい痛みを感じるようになったといいます。

「CRPSの特徴は、灼熱痛です。私の場合は、火であぶられながら金属バットで叩かれているような痛み。加えて、全身をおろし器で削られているような痛みや、腰にボルトを突き刺されているような激痛があります」

痛みのある部位やその神経の近くに局所麻酔薬や抗炎症薬を注射する「ブロック注射」を打ちながら登校していた高校生の頃【写真提供:蒼井心音さん(kocone_aoi_07)】
痛みのある部位やその神経の近くに局所麻酔薬や抗炎症薬を注射する「ブロック注射」を打ちながら登校していた高校生の頃【写真提供:蒼井心音さん(kocone_aoi_07)】

 痛みは、幼い頃から思い描いていた将来にも影響を及ぼしました。麻酔科の医師から「楽器を弾くのは困難」と告げられ、バイオリンの先生になる夢を諦め、音楽大学への進学も断念することになったのです。

「病気になってから初めて人前で泣いたくらい、衝撃的な出来事でした」

 将来が見えない――。そう絶望したとき、心を救ってくれたのは、高校の恩師がかけてくれた「先生になる夢なら叶えられるんじゃない?」という言葉です。

 その言葉に背中を押され、教員を目指そうと決意。音楽大学への進学を考えていたため、当時は文系のクラスに在籍していましたが、もともと化学の実験が好きだったことから理系へ進路変更。病気のことを考えないようにするためにも、今まで音楽の練習に費やしていた時間を埋めるかのように猛勉強。その結果、志望大学への合格を果たします。

 ただ、医療用麻薬によって、なんとか日常生活を送れている状態だったことから、大学4年生の頃、就労に対する不安が生じ、主治医に相談しました。

「私の場合は、医療用麻薬を増やして寝たきりになるか、気力で痛みに耐えて仕事するかの2択だと告げられたので働く選択をしました」

 覚悟を持って、蒼井さんは大学院へ進学。しかし、就職活動は順調に進みませんでした。自身の障害は働くうえで隠せるものではないと考え、病気について伝えたうえで採用試験に臨みましたが、何十校も不採用になり、精神的につらい時期が続いたと言います。

大学院では賞を取って卒業【写真提供:蒼井心音さん(kocone_aoi_07)】
大学院では賞を取って卒業【写真提供:蒼井心音さん(kocone_aoi_07)】

 それでも諦めずに就活を続けた結果、とある中高一貫校への採用が決定。蒼井さんは胸をなでおろしました。

 病気によって音楽の道を断念しながらも、ようやくつかんだ教師としての新たな一歩。しかし、勤務先では障害を理由とした差別的な言葉をかけられるなど、つらい経験を重ねることになります。

 後編では、蒼井さんが直面した職場での問題と、それでも教師を続ける理由について紹介します。

(古川 諭香)