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ナマハゲが男を“父”に変える? 仲野大賀が大人になり切れない男を演じる『泣く子はいねぇが』

著者:関口 裕子

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『泣く子はいねぇが』11月20日(金)より新宿ピカデリー他全国ロードショー 配給:バンダイナムコアーツ/スターサンズ (c)2020「泣く子はいねぇが」製作委員会
『泣く子はいねぇが』11月20日(金)より新宿ピカデリー他全国ロードショー 配給:バンダイナムコアーツ/スターサンズ (c)2020「泣く子はいねぇが」製作委員会

 恋人から夫婦、親へ。その過程に教科書はなく、人によって思いも異なります。そして本来は、いかなる選択もすべて自由ですが、何かを選ぶにはまず自分自身が必要です。本作は、恋人から夫婦に移行しながらも、次のステップと自分自身を見失った男性が主人公。再び見出すきっかけは、幼い頃からそばにあったある神事でした。映画ジャーナリストの関口裕子さんに解説していただきました。

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男鹿を舞台に、父親になり切れない男を描く

 女性が妊娠・出産を経験すると、体の変化も含めて“母”になる(ならざるを得ない)とされているが、男性の場合はなかなかそうもいかないようだ。“父”になったことを意識するのは外的なきっかけによるという説もある。それを描いた映画が、その名も『そして父になる』(2013)。是枝裕和監督はこの作品で、第66回カンヌ国際映画祭審査員賞を受賞している。

 そんな是枝監督が企画に回った映画『泣く子はいねぇが』も、秋田県の男鹿を舞台に、父親に、大人になり切れない男を描いている。監督は『ガンバレとかうるせぇ』(2014)の佐藤快磨。必要とされていないことに気付いたサッカー部マネージャーの選択を描き、PFFアワード2014の映画ファン賞と観客賞を受賞した。

 本作の主人公は、重要な場面で言葉を濁してしまう優柔不断さ故、稼業のスポーツ用品店を傾かせてしまったたすく(仲野大賀)。妻のことね(吉岡里帆)は娘のためにも離婚を考えている。2人が暮らす男鹿市は、重要無形民俗文化財に指定されている「男鹿のナマハゲ」で知られる土地。鬼に扮した人々が、大晦日の晩に地域の家を回り、「泣く子はいねぇがー」などと子どもを脅しながら、無病息災、厄落とし、豊作などを祈る神事だ。

 ある大晦日、テレビでナマハゲの神事が全国中継される中、飲んでタガの外れたたすくは、ナマハゲのお面をかぶったまま全裸でテレビに映ってしまう。その行動は地元に波紋を呼び、たすくは離婚をすると何もかも投げ出して東京へと逃げる。そして、2年後。ことねと娘、会いたさに、男鹿に戻ってくる――。