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芦田愛菜が16歳でたどり着いた“信じること”の意味 居住まいで表現する演技に圧倒される主演作『星の子』

著者:関口 裕子

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『星の子』10月9日(金)TOHOシネマズ日比谷ほか全国公開(C)2020「星の子」製作委員会
『星の子』10月9日(金)TOHOシネマズ日比谷ほか全国公開(C)2020「星の子」製作委員会

 6月で16歳になった芦田愛菜さん。この度公開される主演映画『星の子』では、新興宗教に傾倒する両親を持つ少女という難役に挑戦しました。かねてから才色兼備で知られる芦田さんだけに、役や作品テーマの掘り下げも理論的で深いものになったようです。女優としてのさらなる可能性を感じさせる作品になった『星の子』。その理由を、映画ジャーナリストの関口裕子さんに解説していただきました。

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芦田愛菜が撮影を通じて自問自答していたこと

 自分のために新興宗教に傾倒していった両親(永瀬正敏、原田知世)と、どう相対していくべきか? 信仰の深まりを心配する親戚(大友康平)や姉(蒔田彩珠)、胡散臭い目で見る近所や先生(岡田将生)らの中で、中学3年生のちひろは簡単に答えを導きがたい問いを突き付けられる……。大森立嗣監督・脚本の映画『星の子』で、16歳になった芦田愛菜がこの難しいちひろ役を演じている。

 未熟児として生まれ、病弱な幼少期を過ごしたちひろ。両親はあらゆる治療法を試すが、一向に良くならない。そんな両親がたどり着いたのは「金星のめぐみ」という特別な生命力を宿した水。その水で身体を洗ったちひろの病状は、みるみる改善していった。

 これは、悪徳宗教団体と善意の人々の対立を描く勧善懲悪な映画ではない。団体の若き幹部(高良健吾、黒木華)がちひろに超自然的な原理を説いても、両親が水に浸したタオルを頭に置いて日常生活を送っていても、決定的に否定する理由がないのだ。彼らはただ、他の人と考え方や行動様式が“違う”だけ。彼らと長い時間を過ごし、思いや日常を知るちひろの悩みもそこにある。“水”や“祭壇”など家計を脅かす宗教グッズの存在以外は。

 芦田愛菜は、本作を撮影しながらずっと「信じるとは何か?」を自問自答していたという。彼女はインタビューで、「自分の思う理想像を期待していることを、信じると言っているのではないか」と語っている。だからこそ「期待していた。裏切られたという言葉が出る」のだと。

 そして、期待するものが“その人自身ではない”としたら、「知らなかった側面が見えたとしても、それもその人と受け止め、決断できる。それが信じるということなんだ」と結論付けている。

 とてもきっちりと理論を構築しながら演じていた芦田愛菜だが、計算された部分はまったく感じさせない。好きな先生のイラストを描くちひろ、親を受け入れられずいなくなった姉の場所で丸くなるちひろ、好きな人からの否定的な言葉を受け止められず涙ぐむちひろの姿は、ただの中学3年生。だからこそ、私たちは彼女と同化し、躊躇なく映画の世界で迷うことができる。