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パラ競泳・一ノ瀬メイ選手とロッテ美馬投手の妻・アンナさんが対談 先天性欠損症という「障害」への思い

公開日:  /  更新日:

著者:Hint-Pot編集部・佐藤 直子

オンラインで対談した一ノ瀬メイ選手(右)と美馬アンナさん【写真:Hint-Pot編集部】
オンラインで対談した一ノ瀬メイ選手(右)と美馬アンナさん【写真:Hint-Pot編集部】

リオパラに出場した競泳の一ノ瀬メイ選手 先天性欠損症の第1子を育てるロッテ美馬投手の妻・アンナさんが初対談

 先天性欠損症により右手首から先がない1歳の男の子「ミニっち」は、プロ野球の千葉ロッテマリーンズで活躍する美馬学(みま・まなぶ)投手と、女優・タレントとして活動するアンナさんご夫婦の第1子。アンナさんは障害をもって生まれてきた我が子との出会いをきっかけに、さまざまな心の葛藤を経験した末に「使命」を感じるようになりました。その使命とは、野球やスポーツを通じて健常者と障害者をつなぐ活動や、障害を持つ子どもの家族が意見交換や情報共有できる場を作っていくこと。そこで、今月からさまざまなジャンルの方と対談を重ねて、使命を実現させるヒントを探っていくことにしました。

 第1回にご登場いただくのは、気持ちが揺れ動いた産後、ようやく前向きに歩き出したアンナさんの背中を大きく押してくれたアスリート、リオパラリンピックに出場した競泳の一ノ瀬メイ選手です。ミニっちと同じく、人より右腕が短い一ノ瀬選手は自分のことを障害者だと思ったことがないといいます。インスタグラムやメディアを通じて積極的に発信される前向きな言葉や想いは、アンナさんに「希望」を与えたそうです。

 現在の一ノ瀬選手は、オーストラリアを拠点にトレーニング中。すっかり意気投合して大いに盛り上がったオンライン対談を、全3回シリーズでお届けします。第1回は「障害者」「健常者」の区分けがない社会にするためには何が必要なのかについて、一ノ瀬選手の体験も踏まえたリアルな言葉でお届けします。

 ◇ ◇ ◇

水泳は想いを伝えるための手段「自分が楽しく生きていくことで何かが伝わる」

一ノ瀬メイ選手(以下メイ):今日の対談、本当に楽しみにしてたんです。うれしい!

美馬アンナ(以下アンナ):私も緊張して寝られないくらい楽しみにしてました!

メイ:私が水泳をしている理由って、何秒で泳ぎたいとか、○○大会でメダルが獲りたいとか、そういうことではないんです。もちろん、スポーツの世界で成績は大事。でも、今はこれから生まれてくる子たちが障害を感じずに生きられる社会を作りたくて、それを伝えるために水泳をしているので、こうやって声を掛けてもらうのはすごくうれしいんです。

――水泳は一ノ瀬選手の想いを伝える一つの方法でもあるんですね。

メイ:私は小さい時から、スイミングスクールに入ろうとしたら腕が短いからって断られたり、子どもって何も分からないから「腕どうしてん? キモイ」とか言われたり、悔しい想いをたくさんしました。この状況を変えたいって思う中で、中学生の時に初めて代表に選ばれて、13歳で日本一になったことで、人にからかわれても「日本で水泳が一番」っていうことが自分を守ってくれました。

 でも、なんで水泳でもっと上を目指すんだろうって考えた時、自分を守れるようにはなったけど周りの目は変わっていないなって。目に見える違いもあれば、目に見えない違いもあって、生きづらさを感じている人がまだまだたくさんいる。私はこの生きづらさを「障害」って呼んでいます。私より後から生まれてくる子たちがこの障害を感じずに生きられる世界にしたいと思って、今は水泳をしてるんです。

アンナ:一ノ瀬選手の本も読ませていただいて、インタビューも拝見しました。その中で「メダルを獲ることももちろん目標ではあるけど、それよりも自分が楽しく生きていくことで何かが伝わると思う」と話していらっしゃるのを聞いた時に、まさに息子の笑顔に生きる元気をもらっている最中だったから「そう、こういうことなの!」って一緒に観ていた主人と「ウンウン!」って頷いて(笑)。

メイ:え~、うれしい!

アンナ:その言葉にすごく共感できたし、自分は親の立場でも見ているので、ここまで一ノ瀬選手が強くなられた過程を考えたりしました。私には想像もつかない経験をたくさんして、いろいろなことを感じてきたと思うんです。だからこそ、一ノ瀬選手が言っていることは全世界の人の心に響くんですよね。私も一緒に発信していけたらいいなって思っていたので、こうやってお話できる機会をいただけたことで一歩踏み込めた気がします。

メイ:なんか私も、今日のこのご縁はこの対談だけでは終わらへんと思う。終わらせません!(笑)