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右手首から先がない息子も「プロ野球選手への道がある」 ロッテ美馬投手と妻アンナさんが感じる“使命”
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美馬アンナさんの特別連載最終回 障がいを持つ我が子への想いを包み隠さず語る
千葉ロッテマリーンズで活躍する美馬学(みま・まなぶ)投手と、女優やタレントとして活動するアンナさん夫婦には、先天性欠損症により右手首から先がない1歳の男の子「ミニっち」がいます。出産後、自分の息子が障がいを持って生まれてきたという事実を受け入れられるまで、さまざまな葛藤があったというアンナさん。今でも不安が頭をもたげることはありますが、それを吹き飛ばしてくれるのがすくすくと、そして懸命に生きるミニっちの姿です。
右手があってもなくても、ミニっちはミニっち。障がいは決して恥ずかしいことではなく、個性のようなもの。ミニっちが自然体に育ち、ありのままの自分を誇らしく思うようになってほしいと願うアンナさんは今、自身のインスタグラムでミニっちの成長記と併せ、時には揺れ動く素直な気持ちを飾らない言葉で伝えています。その想いは2万人を超えるフォロワーの心に響いています。
9月14日。アンナさんはインスタグラムで、フロアに座ったミニっちがお父さんを相手に繰り返し、左手で野球ボールを掴んでは投げる動画を披露すると同時に、産院の院長先生からもらった本「奇跡の隻腕 ジム・アボット物語」を紹介。そして、こんな呼びかけをしました。
「今後、美馬っちを通して、野球を通して、ミニっちと同じ境遇で野球をやられている方々とお会いできる機会を作れたらと勝手に思っております。
でも、どうやって声をかけていいのか、どこに言えばいいのか、まったく分かりません。もし、このインスタを見てくださっているお子様や親御さんがいらっしゃいましたら、メッセージをいただけるとうれしいです。
子供たちの未来の選択が1つでも増えるように、私も取り組んでいきたいと思っていますので、温かく見守っていただけるとうれしいです」
葛藤を繰り返しながらも、未来に向けて一歩踏み出したアンナさんが呼びかけに込めた想い、感じる使命について語っていただきました。
◇ ◇ ◇
「ミニっちも野球ができる」…障がいを持つ子たちに明るい未来を
ミニっちに右手首から先がないと分かった時、アンナさんは「この子には野球ができない……」と思ったそうです。旦那さんはプロ野球選手。出産前から男の子だと分かっていたので「やっぱり野球をやらせたかったんだろうな、申し訳ないなって思っていました」。そんな時、産院の院長先生が紹介してくれた本が「奇跡の隻腕 ジム・アボット物語」でした。
1990年代のメジャーリーグで活躍したアボット氏は、ミニっちと同じ、右手首から先がない先天性欠損症でした。それでも、アマチュア時代にはソウル五輪で金メダルを獲得し、メジャーでは263試合に投げて87勝を記録。1993年にはノーヒットノーランの偉業を達成した名投手です。巧みにグラブを持ち替えて、左手のみで投球、捕球、送球をこなし、その名を歴史に刻みました。
「ミニっちも野球ができる」
アンナさんは、アボット氏や障がい者野球について一生懸命調べました。そこで気付いたのは「日本のプロ野球にアボットさんのような人はいない」という事実。そして、心の中に1つの目標が生まれたといいます。
「日本にはアボットさんのように障がいを持ってプロ野球選手になった人はいません。でも、メジャーにいるのであれば、不可能なことではないと思うんです。障がいを持ちながら野球をしている子どもたちの中にも、金の卵がいる可能性だってある。ただ、スカウトの方々は彼らを見るきっかけがないのかもしれないし、子どもたちも『野球は大好きだけど、プロ野球選手にはなれない。見てもらえるわけがない』って思ってしまっているのかもしれない。
だから、私は旦那さんがプロ野球選手ということもあるので、せめて子どもたちが『僕もプロ野球選手になれる、なりたい』と思えるような明るい未来のために活動したいなと、思うようになりました」