料理・グルメ

神秘的な発酵食品の世界 “醸せ師”が魅了されていることとは

著者:小田島 勢子

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干したレーズンを食べる、勢子さんの三女の手【写真:小田島勢子】
干したレーズンを食べる、勢子さんの三女の手【写真:小田島勢子】

 米ロサンゼルスの片田舎で夫と娘3人、鶏、豚、犬たちとともに、自然に囲まれた生活を送る小田島勢子さん。発酵食品作りの講師をはじめ、創作料理のケータリング、プロアスリートの身体作りのアドバイザーなど多分野で活躍しています。今回は今年も生活に潤いや驚きをもたらしてくれた「発酵」について。神秘や歴史を感じる発酵食品造りの魅力を、小田島勢子さんが綴ります。

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陽性者急増で深刻さ増す米ロサンゼルスでの暮らし

 毎年、師走に入るとあっという間に年末。我が家の3姉妹も1学期が終わり、冬休みに入りました。おかげさまでコラムの連載も3年目に突入。こうして、毎年クリスマスや年末の様子を思い起こすと、時の流れの早さを改めて感じます。

 今年はコロナ禍でのクリスマス。ロサンゼルスでは感染者数が過去最大を更新し、病院の入院ベッド数が足りない状況に陥っています。私たちは目の前にある人々の命と暮らしを守るため、より一層の協力体制が求められています。

 さて、今回はコロナ禍の生活を少し頭から離して、発酵の世界をお伝えしている醸せ師(かもせし)として(恐れ多いですが……)、私が菌との生活で感じていることをお話したいと思います。

左からマスタード、味噌3種、紅茶キノコ。すべて発酵食【写真:小田島勢子】
左からマスタード、味噌3種、紅茶キノコ。すべて発酵食【写真:小田島勢子】

発酵食品――菌と人間の共同作業

 先祖代々、世界各国で受け継がれてきた知恵や努力によって生まれた発酵食品。おいしく私たちの健康を守り、時には解毒を助けてくれる存在に惹かれて、実生活における実践から菌や発酵の世界に導びかれた結果、現在の私があります。

 まだ物の流通やテクノロジーが乏しかった時代、いえ、もっとその昔。人間が発見した「発酵」の発端は、自然界の偶然の条件の一致からでした。その発見は人間の経験や能力によって工夫が重ねられていき、発酵を利用した保存食を作る術を生み出しました。

 例えば、日本特有の発酵食品として代表格に挙げられる納豆。。その起源にはついては諸説ありますが、藁に住む枯草菌(こそうきん)の一種が煮豆に付着して発酵し、偶然にできたといわれています。今に伝わる発酵食品を最初に食べた人や、人間にとって有益な調味料、保存食として改良を加えて食べて続けてきた昔の人々の勇気や感覚には、頭が上がりません。

 そんなこんなで先人の勇気と知恵をいただき、私は発酵食品を作ったり食べたりしているわけですが、実際のところ私は「食す」ということよりも、「発酵していく一連のプロセス」にこそ魅了されているのです。実際に素材から作ってみると、やがて味噌や納豆、漬物やワイン、ビールが出来上がっていく。菌の生活とともに変化していくこの様子にこそ、醍醐味があると感じています。