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エリザベス女王の偽スピーチ 放送後もやはり非難轟々 おふざけにも度がすぎた?

著者:森 昌利

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エリザベス女王【写真:AP】
エリザベス女王【写真:AP】

 放送前から話題を呼んでいた、英国の公共放送「チャンネル4」によるディープフェイク動画の“偽エリザベス女王クリスマススピーチ”。現地時間25日午後ついに放送され、完全版を観たあらゆる層から意見が飛び出しているが、やはりその内容は”行きすぎ”との非難が多いようだ。

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女王が机の上に立ってTik Tok風ダンスを披露

 恒例のエリザベス女王のクリスマススピーチは毎年、公共放送局「BBC」で放送される。しかし今年は、もう1つの公共放送「チャンネル4」にも出演? しかしこれは人工知能(AI)の顔認証技術を用いた精巧な偽動画“ディープフェイク”であり、その過激な内容は放送前から物議を醸していた。

 チャンネル4はリベラルな政治姿勢で知られ、王室を支持する保守派とは対立関係にある。“偽クリスマススピーチ”は1993年から毎年放送されており、2013年は元米NSA職員エドワード・スノーデン氏、15年には溺死したシリア難民少年の父親など、社会的に話題の人物が実際に出演してきた。今回の“偽クリスマススピーチ”については、作成の意図を「フェイクニュースに警鐘を鳴らすため」と説明している。

 本物のスピーチで女王は紫のドレスに身を包んでいた一方、その25分後の放送に“偽エリザベス女王”はブルーのドレスで登場。まずはBBCの放送よりもオープンに語れるとして、「ハリー(ヘンリー王子の愛称)とメーガン(妃)が去ったことは悲しいが、その“王室引退”の裏側には、みんなが聞いているよりもっとひどい話があります」とメグジットついてコメント。さらには、ジェフリー・エプスタインとの関係で王室に多大なダメージを与えたアンドリュー王子が「まだそばにいてくれるから(夫妻がいなくなっても)大丈夫」と言わせたあげく「でもいつアメリカに行って帰って来られなくなるかもしれない」と、ちょっと笑えないオチまでつけた。さらには、机の上に立ってTik Tok風ダンスまで披露した。

一般人からは「敬意を欠き過ぎ」「趣味が悪すぎる」と非難の声

 英大衆紙「デイリー・メール」は、ロイヤリストで英国のEU離脱運動の中心人物だった政治家のナイジェル・ファラージ氏のツイートを紹介。同氏は放送前に「よくもまあこんなことを」と呆れまじりの怒りを表明しているが、放送後は本件に触れなかった。また、一般人からは「敬意を欠き過ぎ」「趣味が悪すぎる」と非難の声が集まっていると報じている。

 動画に対する反応は米メディアも取り上げた。「FOXニュース」チャンネルの公式サイトは、英大衆紙「ザ・サン」記者のサイモン・ボイル氏による「彼らが思っているほど賢くもおもしろくもない」とのTwitter投稿を紹介する一方、一般人ユーザーからは「フェイクニュースを広めることがいかに簡単かを伝えている」など警告効果を評価する声もあるとしている。

 当のチャンネル4は放送後にTwitterでメイキング動画を公開。スタッフや女王を“演じた” 英女優のデブラ・スティーブンソンらが、コメディ要素とメッセージ性を含む動画であることを改めて強調した。

 この動画も英国の“開かれた王室”の余禄なのだろうか。日本人には本当に想像もできない話ではある。

(イギリス・森昌利/Masatoshi Mori)