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脳卒中を“正しく恐れる”ための基礎知識 専門医が語る治療と後遺症の実際

著者:Hint-Pot編集部・佐藤 佑輔

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脳卒中の怖さとは(写真はイメージです)【写真:写真AC】
脳卒中の怖さとは(写真はイメージです)【写真:写真AC】

 爆笑問題・田中裕二さんが緊急入院したことで注目を集めた脳卒中。誰でも突然発症する可能性がある、発症したら一刻を争う、重篤な後遺症が残るなど、怖いイメージの強い病気ですが、実際はどのようなものなのでしょうか。全国有数の脳外科手術件数を誇る埼玉医科大学国際医療センター脳卒中外科で、これまで多くの患者の命を救ってきた名医・鈴木海馬先生に伺いました。

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脳卒中の原因はさまざま 実際の治療法は?

 脳卒中と一口に言っても、その原因はさまざま。代表的なものとして、脳の血管に血栓が詰まる脳梗塞、脳の血管が破れる脳出血、くも膜下出血があります。鈴木先生によると、このうちの脳梗塞に限り、発症から4.5時間以内であれば注射による投与で回復が見込める薬があるそうです。

「アルテプラーゼ(rt-PA)という、詰まった血栓を溶かす薬です。脳梗塞は血の塊が血管に詰まって起こるので、その塊を溶かしてしまうというわけです。しかし、この薬を使えるのは発症から4.5時間までと決められています。なぜなら血栓を溶かす薬なので、4.5時間以上経過して投与するとが合併症発症リスクが高まるからです」

 この他、脳卒中に対する治療法としては腕や脚などの太い血管から細い管を通して患部を治療するカテーテル手術、頭にメスを入れる開頭手術などの治療法があります。開頭手術というと、頭髪の剃毛をイメージしますが、大きい病院では現在ほとんど髪を剃らないところも多いとか。

「専門の外科医は術後の容姿や出来栄えも重視して技術を積んでいます。私のところでは傷の上を1センチほどの幅しか剃らないので、術後には女性であれば髪で隠れることがほとんど。とはいえ、地方の病院ではまだ、剃るところもないわけではないですが……」

 誰にでも起こり得る脳卒中。近年は食生活の欧米化に伴い、発症世代の若年化も進んできています。また、経口避妊薬、いわゆるピルを服用していると発症リスクが上がるとの研究もあるそうです。

「経口避妊薬には血栓を作りやすい副作用があると言われているため、脳卒中の疑いのある若い女性が運ばれてきたら、ご家族には避妊薬服用の有無を必ず尋ねます。この面においては、今後の法改正で手に入りやすくなることに懸念もありますね」

定期的な脳の健康診断でしっかり予防を

 発症後は一刻も早く救急車を呼ぶべきというイメージもありますが、これもケースバイケースだそうです。日頃から些細なサインを見逃してはいけないとなると、プレッシャーに感じることも……。ただ、それよりもむしろ定期的な検査が予防につながるといいます。

「救急車を呼ぶべきケースは、一目見て明らかに普通ではないと分かります。いきなり倒れたり、箸が持てなかったり、言葉が出なかったり。そういう時はすぐに救急車を呼んでください。一方、一過性脳虚血発作といって、ちょっと詰まった状態が体の治癒機能で治るような軽いケースもあります。ただし、そういった場合も脳卒中になりやすい状態なので、早めに検査した方がいいでしょう。一番大切なことは、定期的な脳の健康診断を受けてそのようなことが起こる可能性がないか確認することですね」

 とはいえ、脳卒中は日本における近年の死亡率の上位、後遺症で寝たきりとなる確率は第1位とされる怖い病気です。もし仮に、家族に後遺症が残ってしまった場合、どのようにケアしていけばいいのでしょうか。

「いわゆる“植物状態”になることが非常に多い病気です。寝たきりとなった患者さんのご家族の介護は、言い尽くせないご苦労があります。ただ、日本は社会保障がとても恵まれた国。介護保険やさまざまな支援がたくさんありますから、かかりつけ医にそういった情報を聞いて、時にはショートステイやデイサービスを利用するなどしながら、ご家族自身の体と心に向き合う姿勢が大切です」

 寒い日が続く今の季節は、夏に比べて10倍近くも脳卒中発症リスクが高いのだそう。定期的に検査をしつつ、“正しく恐れる”ことが肝心ですね。

(Hint-Pot編集部・佐藤 佑輔)