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ヒット商品「パジャマスーツ」誕生秘話 発売までわずか4か月の舞台裏に迫る
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スーツメーカーとしての意地を見せたこだわり
そうして始まった「パジャマスーツ」開発。当初からコンセプトは変わらず“パジャマ以上おしゃれ着未満”です。着ていて楽なことと、きちんと見えること。とはいえ、相反する要素を形にすることは、口で言うほど簡単ではなかったといいます。
「やっぱり“楽なものはだらしない、きちんと見えるものは窮屈”というのが普通なんです。でも、お客様のニーズがそこにあるなら挑戦するしかない。スーツメーカーとしての意地でもありましたね」
この意地はパターン設計へのこだわりにも現れています。「パジャマスーツ」の要である“きちんと見えて楽”を実現するため、何度も書き直したそうです。
「普通のスーツは背中の中心に縫い目がありますが、楽なスタイルだと背中は縫い目がない1枚取りの方がいいんです。でも、そうすると肩甲骨の周りの膨らみが出ないので、そこにダーツ(※布の一部をつまんで縫製する技法)を入れて、肩を動かしやすく、窮屈感を無くしました。パンツは立体的なお尻のパターン処理の部分ですね。ウエストがゴムで、10センチほど余裕があるので、細い人が履いても、恰幅の良い人が履いてもシャープに見えるシルエットにする限界値というものをパターン上に設計するのが難しかったところです」
また、素材は“ダンボールニット”と“メランジジャージー”をセレクト。これは“楽できちんと見える”というニーズの中にも、「楽」と「きちんと見える」で優先順位があるためだそう。
「余分なシルエットを拾わない素材で立体感の出る、しっかりとした『ダンボールニット』。ソファでごろごろしてもシワになりにくい伸縮性に富んだ『メランジジャージー』。どちらの声にも応えるため、最初から2種類の素材でそれぞれ作ることになりました」
「値段を間違えなければ大丈夫」
サンプルが出来上がった時点で、販売員含めて社員の反応は半信半疑。「今まで見たことのない商品だけど売れるのか」という声や、販売員からは「値段を間違えなければ大丈夫。売る自信はある」という声もあったとか。
「最初は1万5000円くらいを考えていたんですが、現場の販売員からは『高い』と(笑)。着心地も値段ももう少し楽なカジュアルなものを求めているんじゃないかと、上下で1万円を切ることにしました」
思い切って決めた金額はメンズのジャケット、パンツともに4990円(税抜)。ホームウエアとしての手に取りやすさを明確にしました。それにしても、7月に売り場でヒアリングを実施してから約4か月後の11月に発売とは、スピーディーさにも驚きますね。
「かなりの大特急でしたね。1年前に企画がスタートするのが通常のフローなので。先だってのマスクが1つのきっかけではありましたが、お客様が今必要としている状況に対して、なるべく早くリリースしようと。いろんな取引先にもご協力頂きながらの発売となりました」
かなりのスピード感で商品化された「パジャマスーツ」。後編では、その絶妙なネーミングや世界を巻き込んだ発売後の反響について話を伺います。
(yoshimi)