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作中での裸も「必要であれば」躊躇しない瀧内公美 仏名女優との共通点とは

公開日:  /  更新日:

著者:関口 裕子

『裏アカ』4月2日より全国にて公開 (c)2020映画「裏アカ」製作委員会
『裏アカ』4月2日より全国にて公開 (c)2020映画「裏アカ」製作委員会

 テレビドラマではややクセのある役を演じている瀧内公美さん。主演を務めた作品は映画が多く、いくつかの映画賞にも輝いている演技派です。中には服を着ているシーンが極端に少ない作品もありますが、不思議なまでにいやらしさはなく、むしろそのシーンの必然性を訴えかける演技が光っています。“体当たり演技”といった使い古された表現では収まり切らない存在感と演技力。役と向き合う姿勢には、フランス名女優との共通点も感じられるそう。そんな瀧内さんについて、映画ジャーナリストの関口裕子さんに解説していただきました。

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「その役を生きるために裸体が必要であればそのように演じる」

 瀧内公美は高校生の頃から地元でモデルの仕事を始めていたが、演じる仕事を意識し出したのは大学4年の時。大学入学を機に東京に出てきたものの何をすべきか迷う時間があり、映画のエキストラを経験したことで俳優の道に踏み出したという。

 2020年は、話題のドラマへの出演が続いたのでその名を知る方は多いと思う。「恋はつづくよどこまでも」(2020・TBS系)ではナースステーションのムードメーカー的看護師・石原こずえ、「恋する母たち」(2020・TBS系)ではヒロイン・石渡杏(木村佳乃)の状況を脅かす再婚相手の元妻、「共演NG」(2020・テレビ東京系)では番組の宣伝プロデューサーと、どれもドラマを予定調和にさせない印象的な人物像を作り上げていた。

 2019年公開の映画、荒井晴彦監督『火口のふたり』のヒロイン・直子役では、第93回キネマ旬報ベスト・テン主演女優賞などを受賞した演技派でもある。東日本大震災後の秋田を舞台に、自衛官と結婚するまでの5日間を元カレ・賢治(柄本佑)と濃厚に過ごした直子。彼女が迎える“終末”を描いた作品だ。

 衣装は『すばらしき世界』(2021)、『セーラー服と機関銃』(1981)などの小川久美子が担当していたが、服を着ているシーンは極端に少ない。生きていることを常に確認せずにはいられないとでも言うように、ずっと賢治と絡んでいる。

 しかし裸のシーンが多いにもかかわらず、不思議といやらしさはない。映像美で知られる川上皓市カメラマンの手腕もあろうが、たぶん瀧内がスクリーンの中で起きていることを、私たちに“自分ごと”と感じさせるテクニックを持つからではないか。

 瀧内公美に注目したのは、廣木隆一監督の『彼女の人生は間違いじゃない』(2017)だった。瀧内が演じたのは、福島の仮設住宅に父親と2人で暮らすみゆき。地元市役所に勤務しながら渋谷の風俗店でアルバイトをしている。

 瀧内はセックスシーンがある作品のオファーを受けても、それが躊躇する理由にはならないという。「お風呂に入る時に服を着ないように、その役を生きるために裸体が必要であればそのように演じる」と。だからなのか、客とみゆきとのセックスシーンは濃厚であればあるほど、スクリーンには空虚さが満ちた。みゆきが“未来が見えない”と感じているからだろうか。

 瀧内はそんなみゆきを、泣いているのか笑っているのか見分けのつかない表情も使って演じてみせる(眉間から目の表現が素晴らしい)。どうにもならないのであれば“自分じゃない誰かになりたい”。だからみゆきは渋谷に出かける。これを観た私たちはそう理解する。