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綾瀬はるかは“癒やし系”以上の存在 突き抜けた役を演じ続ける理由とは?

公開日:  /  更新日:

著者:関口 裕子

(c)2020映画「奥様は、取り扱い注意」製作委員会
(c)2020映画「奥様は、取り扱い注意」製作委員会

 24日に36歳を迎える綾瀬はるかさん。押しも押されもせぬ大人気女優の1人であり、その柔らかなイメージから“癒やし系”の筆頭でもあります。しかし、これまで主演したドラマや映画を振り返ると、役柄の幅広さに驚かされることでしょう。ホームドラマからアクションまで柔軟に対応する綾瀬さんの最新作は、大ヒットドラマの映画化『劇場版 奥様は、取り扱い注意』。本作の見どころや、綾瀬さんが「突き抜けた役」を演じ続ける背後について、映画ジャーナリストの関口裕子さんに解説していただきました。

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綾瀬が演じる役の幅の広さ、多種多様さは特筆に値

 元特殊工作員で、現在は記憶喪失になっている専業主婦。そんな特殊な設定を、説得力をもって演じるのはたやすいことではない。「人気のある綾瀬はるかだから」と言ってしまえばそれまでなのだが、彼女の演じる役の幅の広さ、多種多様さは特筆に値する。

 綾瀬がドラマや映画で演じる役のふり幅は紹介したい。映画では『僕の彼女はサイボーグ』(2008)でサイボーグ。『ICHI』(2008)で侠客の座頭市。『映画 ひみつのアッコちゃん』(2012)でアッコちゃん。『今夜、ロマンス劇場で』(2018)でモノクロ映画の中のヒロイン。

 ドラマでは「JIN-仁-」(2009、2011・TBS系)で江戸時代の女医。大河ドラマ「八重の桜」(2013・NHK)で新島襄の妻・八重。「精霊の守り人」(2016・NHK)で武骨な用心棒バルサ。「義母と娘のブルース」(2018、2020・TBS系)で連れ子を育てるキャリアウーマン。そして現在放送中の「天国と地獄~サイコな2人~」(2021・TBS系)では、連続殺人犯と魂が入れ替わってしまう捜査一課の刑事を演じている。

 俳優である以上、多様な役を演じたいと誰でも願うはず。主演でなければそれもある程度可能だが、女性でリーディングアクター(主演俳優)となるとそうもいかない。なぜならドラマ化、あるいは映画化される物語で、女性が主人公となるもののジャンルはかなり絞られるからだ。

 綾瀬の周囲には、ちょっと変わった役を演じさせてみたいと思う企画者が多数いるのだろう。しかしバジェット(制作費)が大きい映像作品の場合、余程“イケる”という確信がなければ“変わった”企画は承認されない。ロザンナ・アークエットが初監督したドキュメンタリー『デブラ・ウィンガーを探して』(2002)は、役の選択肢のなさに悩む女性俳優たちを描いた作品だ。若い時はラブストーリーを、年齢が進むと「母親役を演じるしかない」とメグ・ライアンらが訴える。

 綾瀬にしてもその傾向はあるようだ。「30歳を過ぎた頃からお母さん役が増えてきた」と語っている。とはいえ、それは大河ドラマ「いだてん~東京オリムピック噺~」(2019・NHK)や「義母と娘のブルース」。母である前に1人の人間がきちんと描かれ、キャラクターは充分立っている。綾瀬には、このままずっと突き抜けた役を演じ続けてほしいと心から思う。