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美馬アンナさん「心に刺さる」 義足の球児が障害持つ子の親に伝えたいこととは
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義足で甲子園に出場した今治西高OB・曽我健太さんとの対談・最終回
女優やタレントとしての活動に加え、健常者と障害者をつなぐきっかけとして、野球やスポーツを生かせる形を模索中の美馬アンナさん。先天性欠損症のため右手首から先がない1歳半の元気な男の子「ミニっち」の母としても、障害を持つ子どもの家族が意見交換や情報共有できる場所を作ろうと決意しました。
そこで、プロ野球の千葉ロッテマリーンズで活躍する夫の美馬学(みま・まなぶ)投手とともに、縁と希望をつなぐ活動を具体化させるためのヒントを探ることに。さまざまなジャンルの方との対談を通じ、理解と知識を深めています。
お届けしている対談シリーズには、5歳の時に事故で左足首上部から先をなくし、義足を使いながら全国高等学校野球選手権大会(夏の甲子園)に出場した愛媛県立今治西高等学校の野球部OB、曽我健太さんが登場。今回の後編では、曽我さんの障害に対する想い、障害を持つ子どもの親御さんへのメッセージなどをお伝えします。
◇ ◇ ◇
障害は個性の1つ?「本当に心の底から言える人はなかなかいない」
司会:曽我さんは現在、滋賀・大津市役所に勤務なさっているそうですね。
曽我健太さん(以下曽我):今は農林水産課という部署で鳥獣害対策を担当していまして、獣と戯れています(笑)。
美馬アンナさん(以下アンナ):だからワイルドな感じなんですね(笑)。
曽我:(笑)畑や民家を荒らすイノシシを罠にかけて駆除したりしているので。
アンナ:現在はご結婚されて、お子さんをお持ちのお父さんでもあります。甲子園出場で注目を浴びた頃とご家族を持つ今では、ご自身の障害に対する向き合い方に変化はありましたか。
曽我:そうですね。学生ではなくなってから、障害を意識することは減ったと思います。周りに障害を持つ人がいても、僕は昔から何とも思わないタイプです。自分に対する周りの目も、大学くらいまで気になることもありましたが、今では世の中もだいぶ寛容になっていますし、意識することはなくなりました。
僕の子どもは5歳ですが、生まれた時から僕の足を見て育っているので普通になじんでいて、今のところ義足について「なんでこういう足なの?」と聞かれたこともありません。子どもが言うことを聞かない時に「パパの足みたいになるぞ」と言うと、「ヤダ!」とは言われます(笑)。
アンナ:かわいいですね(笑)。曽我さんがおっしゃる通り、以前に比べると今の社会は障害に対して寛容になっているんでしょうね。障害も「個性の1つ」という見方が多くなっている気がします。
曽我:僕は自分の足について「個性の1つと心の底から思う」というよりは、そう言い聞かせてきた部分があります。障害を持つ当事者として、いくら前向きなことを言っていても、本当に心の底から「これは自分の個性です」と言える人って、なかなかいないと思うんですよ。
やっぱり「もし自分が普通の足だったら」と考えることはありましたし、誰しもそうだと思います。個性だと言い聞かせながらやるしかない。そういう部分は、どの方でもあるんじゃないかと思います。
アンナ:そうですね。私の息子は右手首から先がないので、ものすごく人目に付きやすい。今でも公園に行くだけで、他の子どもたちの視線の的になることがあります。
私もやっぱり「個性だ」とすごく前向きに受け入れて生きてはいますけど、本当に曽我さんのおっしゃる通り、心の底から思えている人って少ないでしょうね。「個性なんだ。個性だぞ」と、自分に言い聞かせて子育てをしている感じです。私の息子も、曽我さんとは違った立場ですが、きっと同じように思って生きていくんでしょうね。