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引退を考えたことも…モデルから演技の道へ進んだ岡本玲 日々を支える猫の存在

公開日:  /  更新日:

著者:Hint-Pot編集部・西村 綾乃

「俳優一本でやっていく」と覚悟を決めた出来事とは

岡本玲さん【写真提供:KAAT神奈川芸術劇場】
岡本玲さん【写真提供:KAAT神奈川芸術劇場】

 大学時代にはNHK連続テレビ小説「純と愛」(2012)に出演。学んだ成果が出ているように思えましたが、就職活動をする同級生の姿を見た時、「私も芸能界以外に生きる道があるのでは」と心が揺れてしまいます。

 思い詰めていた時、小劇場で行われる事務所主催の公演に出演が決定。いつも通り取り組んでいた岡本さんですが、演出家に「身が入っていない」と見抜かれてしまいます。それは殺陣のシーンでした。

「お腹をパンチする場面で、『まだ!』と何度もやり直すよう言われて。延々と繰り返したんです。『もう1回!』と止められる度に、心を打ちのめされて。歯を食いしばって顔を上げたら、『中途半端にやるな。本気じゃないから伝わらないんだ!』と叱咤されて……。それを聞いた時、『あ、そうか、バレるんだ』と思ったんです」

 開眼した岡本さんは「将来どうなるかなんて分からないけれど、今この瞬間本気でやらないと、同じ舞台に立つ人、観に来てくれる人に失礼だな」と猛省。一喝されたことで、「俳優一本でやっていく」と覚悟を決めました。

 一場面一場面に、全力で取り組むようになると、もやもやとしていた思いが嘘のように晴れていきました。「お芝居が好きなくせに、逃げていた」と反省。「好きでやっていることなら、人に認められなくたって関係ないじゃないか。自分が芝居を楽しめれば、結果が出なくてもかまわない」と心が軽くなったといいます。

 負けず嫌いな性格が功を奏し、飛躍を続けてきましたが、「お芝居の中に居場所を求めていた」と妥協できない性格には苦しめられたよう。今は「おかえり」と玄関に駆け寄ってきてくれる、とろろちゃんとおかかちゃんの温かい心が、岡本さんの“帰る場所”になりました。

コントロールできない存在が変えてくれた意識

 新型コロナウイルスの影響で、2020年には予定していた公演が延期するなど先行きが不透明な状況も経験しました。そうしたことから、「改めて表現を続けることができる環境をありがたいと感じている」そうです。

 また2021年8月27日からは、KAAT神奈川芸術劇場(横浜市中区)で上演される舞台『湊横濱荒狗挽歌~新粧、三人吉三。』(みなとよこはまあらぶるいぬのさけび~しんそう、さんにんきちさ。)に出演が決まっています。

「舞台は歌舞伎の人気演目『三人吉三』がモチーフ。玉城裕規さん、森優作さんとともに、アウトローを演じます。演出家のシライケイタさんに『立派な看板役者になってほしい』と激励していただいたので、そうなれるように頑張りたいです」と思いを込めています。

 進んでいる稽古では、脚本を道筋に「まるで猛獣のよう」と演出のシライさんが表現するほど個性的で縦横無尽な俳優陣が、アドリブを挟む場面も多いそう。「ジャズのセッションのように。その時に思ったことをそれぞれがぶつけてくるので、気が抜けない」と大変ながらも楽しそうな様子。客の目の前で演じる舞台は、「矢印が演者から観客への一方向ではなく、双方向に動いています。客席の空気は演じる私たちをのせてくれたり、不安にさせたりする。五感を使って楽しんでほしい」と呼びかけました。

 稽古の疲れをねぎらってくれるのは2匹の猫たち。「おもちゃを取ろうとジャンプしたのにこけてしまったところを目撃したら、『え、別に私は何もしてないけど』という様子で、すました顔で、1回なかったことにするんです。そのメンタルの強さを見習いたい」と笑顔を見せました。

 仕事がゆっくりな日は、朝ごはんを食べた後がとろろちゃんの甘えん坊タイム。顔を舐めて、労わってくれるそう。今回の取材時は、自宅からビデオ通話でインタビューを受けていた岡本さん。いつもなら岡本さんの膝を占領するおかかちゃんですが、部屋の扉を閉められたことに仰天したのか、「ニャー、ニャー」と切ない声を響かせました。

 そこで離席して、ドアを開けてあげた岡本さん。体をぴたりとくっつけてきた2匹を愛おしそうに見つめます。「自分でコントロールできない存在と暮らすことで、どんなことも楽観視できるようになりました」。朗らかな表情に、幸せがにじみ出ていました。

◇岡本玲(おかもと・れい)
1991年6月18日、和歌山県生まれ。女優。第7回雑誌「ニコラ」専属モデルオーディションでグランプリを獲得し、デビュー。以後、ドラマ・映画・CM・舞台と多方面で活躍中。
主な舞台出演作に、『壁蝨』(加藤拓也作・演出)、『熱帯樹』(三島由紀夫作・小川絵梨子演出)、『罪男と罰男』(丸尾丸一郎脚本・演出)『迷子』(谷碧仁作・演出)、『森 フォレ』(上村聡史演出)など。2020年1月には二人芝居『ダニーと紺碧の海』を自身による企画プロデュースで上演するなど、精力的に活動している。
2021年8月27日からはKAAT神奈川芸術劇場(横浜市中区)で開催される舞台『湊横濱荒狗挽歌~新粧、三人吉三。』に出演する。

 
◇KAAT神奈川芸術劇場プロデュース『湊横濱荒狗挽歌~新粧、三人吉三。』(みなとよこはまあらぶるいぬのさけび~しんそう、さんにんきちさ。)
作:野木萌葱
演出:シライケイタ
出演:玉城裕規・岡本玲・森優作/渡辺哲・山本亨・ラサール石井 ほか
日程:2021年8月27日(金)~9月12日(日)
会場:KAAT神奈川芸術劇場〈大スタジオ〉
公式サイト:https://www.kaat.jp/d/minatoyokohama

(Hint-Pot編集部・西村 綾乃)

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