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ヘンリー王子の回顧録は“米国向け”か 歴史家「英国では致命的ダメージを受けている」

公開日:  /  更新日:

著者:森 昌利

ヘンリー王子【写真:AP】
ヘンリー王子【写真:AP】

 3月放送のインタビューやポッドキャスト、さらにはApple TV+のドキュメンタリーシリーズに出演し、ロイヤルファミリーの一員として前代未聞の暴露と王室批判を繰り返したヘンリー王子。しかも、36年間の人生を振り返る回顧録まで出版するという。英国では王子の主張が真実かという問題の前に、家族内のプライバシーに関する話を公にし、さらに攻撃したことで人気は急降下。やんちゃな次男坊王子として一時はエリザベス女王に次ぐ人気者だった王子に、現在は非難が集中している状況だ。そんな現状を鑑み、英君主制の専門家による興味深い指摘が話題になっている。

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英国でのヘンリー王子は「致命的なダメージを受けている」

 今回発言した専門家は、現代英君主制の歴史家でウィンザー家の専門家エド・オーウェンス氏。ロンドン大学歴史学研究所から20世紀中盤における英王室のマスメディアイメージに関する研究書も発行している他、同大学の現代君主制研究センターの名誉研究員なども務めている人物だ。

 そんな同氏は英大衆紙「デイリー・エクスプレス」に対し、来年に出版されるヘンリー王子の回顧録は、「英国では(ヘンリー王子が)致命的なダメージを受けているため、米国市場向けに書かれたものになるでしょう」と発言した。

 さらに、今回の性急で唐突な印象もある回顧録出版は「まだ興味を持たれているうちに本を出そうということでしょう。(“王室引退”で)ハリー(ヘンリー王子の愛称)は話題の人ですから」と語り、“旬のうちに”というビジネス的な理由が優先されている状況を指摘した。

 来年はエリザベス女王の金字塔ともいえるプラチナ・ジュビリー(在位70周年の祝賀イベント)。とてもではないが英国人は、そんな祝福ムードの年に公務より“王室での孤独”を訴えた妻を選んで米国移住した王子のさらなる暴露や王室批判を読む気にはならないかもしれない。しかしオーウェンス氏が指摘するようターゲットを米国人に絞っても、最近では米国での評判も下落傾向だと報じられている。

 果たしてどれだけの売り上げになるのか。出版元の「ペンギン・ランダムハウス」が日本円にして20億円超の前払い金を払ったという報道もある。そういう意味でも今から心配が絶えない回顧録だろう。

(イギリス・森昌利/Masatoshi Mori)