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発達障害の息子が紛失した母手作りノート 届いた感謝伝える投稿で注目 「勉強になる」

公開日:  /  更新日:

著者:Hint-Pot編集部

ノートはシンプルに 「支援者に素早く伝えることが大切」

ルビなどは振らずなるべくシンプルに。息子さんの通学用にバスの時刻表なども添付【写真提供:Yakkun(@yakkun33)さん】
ルビなどは振らずなるべくシンプルに。息子さんの通学用にバスの時刻表なども添付【写真提供:Yakkun(@yakkun33)さん】

 Yakkunさんにノートのこだわりや息子さんの反応などをお聞きしました。

Q. 「猫のノート」を作ったのはいつですか?
「今年の4月の進学に伴い、『自力通学』か『保護者の送迎』を選択しなければなりませんでした。そこで、公共交通機関を利用しての自力通学に挑戦させようと思い、入学前の春休み中に作りました」

Q. 作成したきっかけは?
「この疾患についての書籍は世にたくさん出回っていますが、10人いれば10人の特性があり複雑です。同じ疾患なのに『あの子はできているけど、うちの子はできないんだなぁ』ということがたくさんあります。

 それゆえ、『こうすれば正解!』というのがないのです。結果、行き着いたのが『猫のノート』。今回、本人は迷子にならずに学校へ到着し、“シロちゃん”だけが『迷子の子猫ちゃん』になってしまった事件でしたが、息子が確実に成長していることを感じた出来事でした。これも『猫のノート』のおかげですね」

Q. 「猫のノート」を作る上で工夫したことやこだわった点を教えてください。
「一番意識したのは『情報量のダイエット』です。下記のポイントに気を付けて、できるだけシンプルに作りました。

・1つの文章や絵に1つの情報だけを書く(一文一義、一絵一言)
・もしこうなったら→こうしてもらう、○○が起きたら→××になる(if-thenルール)

 また、イラストをシンプルにしてノイズを作らないことも大切です。ルビも振りません。子どもは絵で判断するので、無理にひらがなを使わなくても大丈夫なんです。

 支援者となる大人側からすると、このように“ひらがなだらけってとてもよみにくいじゃないですか”。助けが必要な事態が起きた時は『支援者に素早く伝えること!』が主目的になるので、むしろ支援者が読みやすい方が良いと私は考えます。漢字は学校やおうちで勉強しましょう!」

ノートを使って息子1人で定期券購入にチャレンジ 添えられた手紙に感動

Q. 「猫のノート」を初めて見た時の息子さんの反応や感想を教えてください。
「ノートの中にも書いてありますが、息子は猫が大好きなんです。『おにぎり4つにゴマてんてん。おヒゲと、おくちと、シッポ~をつけたら……シロちゃん』なんて、適当に作った絵描き歌を歌いながら渡しました。

 息子は感情を表現するのが苦手なので、受け取っても他の子みたいに『わーいっ!』っていう感じはありませんが、『ありがとう。大事にするね』と言ってポシェットにしまってくれました」

Q. 息子さんにノートの使い方をどのようにレクチャーしましたか?
「まず、最初にLINEスタンプを作り、息子の携帯電話に入れてあげました。シロちゃんのスタンプを押しながら、LINEで私とつながっているという状況を認識させる練習からです。

 次に、スタンプを交えて会話のようなもの(?)のやりとりに慣れてきた頃に「猫のノート」をプレゼントしました。ここで自分が使っているスタンプが、初めて「ノート」というリアルな形になって彼の前に現れたわけです。

 掴みはOKだったと思います。現在は次のステップとして、『困ったことがあったら、誰でもいいから大人の人に“シロちゃんのノート”を見せてね』という声かけを度々しています。でも、実際に自分から提示したのはまだ1回だけです」

Q. 「猫のノート」が役立った時のエピソードを教えてください。

定期購入時におつりに添えられた手紙【写真提供:Yakkun(@yakkun33)さん】
定期購入時におつりに添えられた手紙【写真提供:Yakkun(@yakkun33)さん】

「バスの通学定期券を買う時に、購入時に必要なものをすべてジップロックに入れて『猫のノート』と一緒に受付の人に渡すように伝えました。『これを』『全部渡してね』『1人で買ってくるんだよ』と、指示はこれだけ。そうしたら、1人で定期券を購入して戻ってくることができました。

 実はこの時、意図的に“おつり”が出るように持たせていたのですが、返ってきたジップロックの中には受付の方からの手紙が入っていて、『2万円お預かりしましたので3560円のおつりです。ありがとうございました』と書いてありました。

 息子は上手に話をすることができません。でも『猫のノート』のおかげで障害があることを相手に伝えることができ、目的を達成することができました。受付の方からのメッセージがとてもうれしかったです」