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日本独自のお月見「十三夜」とは お供え物は必要? 風流を感じる月の呼び名あれこれ
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風流を感じる日本での月の呼び名
月は日々その姿を変えます。月は地球の周囲を回っているので、太陽の光に照らされる場所が変わり、光の当たらないところは影となって見えません。このため、新月から満月へ、そしてまた新月に満ち欠けていくのです。この変化はおよそ29.5日をかけて繰り返されます。
古くから月の満ち欠けは日時を知る手段としても用いられ、人々の生活に深く関係してきました。日本人は、満ち欠けを繰り返してさまざまな形になる月に名を付け、大切な存在として親しんできました。
お月見で知られる十三夜や十五夜だけではない、それぞれの月の主な呼び名を紹介します。
新月から満月へ 満ちていく月の名前
○新月
1日目。月齢は0。「朔月(さくげつ)」。朔は「初め」という意味。月の満ち欠けが始まるという意味。肉眼では見えません。
○二日月(ふつかづき)
2日目。「繊月(せんげつ)」「既朔(きさく)」。特に旧暦の8月2日の月を示す場合もあります。糸のように細い月なので気付きにくいかもしれません。日没後、西の空の低い位置に出てすぐに見えなくなります。
○三日月(みかづき)
3日目。「若月(わかづき)」「眉月(まゆづき)」。夕暮れ後に出る細い長く輝く月。日本では幸福をもたらす月とされています。ちなみにパンのクロワッサンはフランス語で三日月の意味。
○上弦(じょうげん)の月
7~8日目。「弓張月(ゆみはりづき)」「上(かみ)の弓張り」。日没後に南中します。向かって右半円が輝く月。半月の形が弓に似ていることから、弓に張る糸の「弦」の文字が使われている説があります。新月から満月へと移り変わる中間の月。
○十三夜
13日目。十五夜に次ぐ美しさと言われる月。特に旧暦9月13日の月を「後の月」「栗名月」「豆名月」と呼び鑑賞します。これから満ちていく美しい月です。
○小望月(こもちづき、こぼうげつ)
14日目。「十四日月(じゅうよっかづき)」。「近く」を意味する「幾」、満月の意味の「望」から「幾望(きぼう)」とも呼ばれています。満月の前夜に出る月です。もうすぐ満月になることに期待を込めた名です。
○満月
15日目。「望月(もちづき)」「十五夜」。まん丸い月。太陽と地球と月が一直線上に並ぶので夜空に明るく輝きます。これ以降、月の出が一晩ごとに遅くなっていきます。
満月後は月の出が遅くなり「待つ」名前が多い
○十六夜(いざよい)
16日目。「既望(きぼう)」。「いざよう」とは「ためらっている」という意味。月の出が少し遅くなっているのを「月が恥ずかしがっている」と見立てました。新月に向かってだんだん欠けていきます。
○立待月(たちまちづき)
17日目。月の出を今か今かと立って待つうちに出る月。これ以降、月の出を「待つ」名前が続きます。
○居待月(いまちづき)
18日目。立待月よりもさらに月の出が遅く、立って待つよりも座って待った方が良いという意味。
○寝待月(ねまちづき)
19日目。「臥待月(ふしまちづき)」。さらに月の出が遅くなることから、寝て待った方が良いという意味から呼ばれる名前です。
○更待月(ふけまちづき)
20日目。「亥中(いなか)の月」。亥中とは現在の22時頃。夜が更けるのを待ってようやく出てくる月。
○下弦(かげん)の月
22~23日目。「二十三夜月」。上弦の月とは反対。向かって左半円が輝いて見える月。真夜中の深夜0時頃に出ます。昼頃に沈むので夜明け以降の青空に見えることも。
○二十六夜月
26日目。「暁月(ぎょうげつ、あかつきづき)」。深夜1時から3時の間に昇る月。夜明けの空に白く輝きます。三日月とは反対側を向いた月。
○三十日月(みそかづき)
30日目。月齢は29。「晦(つごもり)」。月が姿を見せないので「月隠(つきこもり)」が変化して「つごもり」となったという説もあります。
秋の夜長。十三夜だけではなく、さまざまな月の表情を楽しんではいかがでしょうか。
(鶴丸 和子)
鶴丸 和子(つるまる・かずこ)
和文化・暦研究家。留学先の英国で、社会言語・文化学を学んだのをきっかけに“逆輸入”で日本文化の豊かさを再認識。習わしや食事、季節に寄り添う心、言葉の奥ゆかしさなど和の文化に詰まった古の知恵を、今の暮らしに取り入れる秘訣を発信。
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