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毎週つまらなそうにケーキ買う中年客 その理由と店員の交流を描いた漫画に「ボロ泣き」
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毎週、同じ曜日、同じ時間に同じものを買っていく。しかも、まったくうれしくなさそうに。こんな人がいたら、店員さんは気になりますよね。ただ、その理由が明らかになった時、お客さんへの見方はガラリと変わるかもしれません。ケーキ屋店員の青年と中年男性客のささやかな交流を描いた創作漫画が話題になり、感動が広がっています。作者のおくら(@okura_yp)さんに話を伺いました。
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仕方なくケーキを買っているように見える男性 店員はムッとするが…
ケーキ屋で働く「稲田」は大学2年生。お客さんへの「ありがとうございました」を「ありあとっしたー」と“発音”し、先輩店員から注意されてしまう若者です。
そんな稲田はある日、1人の中年男性と出会います。どこかつまらなそうに、作業のように「フルーツタルト」を1つ買っていくケーキ屋の常連客。しかも、決まって毎週金曜の閉店間際に来るため、稲田にとっては“気になる客”になっていきます。
毎週お店に来てくれる人がいれば、店員としては話しかけてみたくなるもの。ある日、「お客さん このケーキ好きなんっすね」と声をかけてみることに。すると、思いもよらない反応が返ってきます。
うつむきながら「いや おれは別に」と答えた中年男性。「欲しくないものを仕方なく買っていく」ような男性の返答に、稲田は思わずムッとしてしまいます。そして、「カッコわりー」「こんな大人にはなりたくねーな」と心の中でつぶやいてしまうのです。
ところがある日、稲田が中年男性に「フルーツタルト売り切れなんです」と悪意のある嘘をついたことから、2人の関係は変化してきます。嘘をついて以来、ケーキ屋に来なくなってしまった中年男性を稲田は道端で見かけます。気になった稲田は男性に声をかけると、実は毎週買っていたフルーツタルトは、寝たきりの母親のために買っていたということが明らかになります。そして、さらに衝撃的な事実を告げられます。
中年男性がどのような思いで毎週、ケーキを買っていたのか。ケーキを買う必要がなくなったことで、自分がしていた行為についてどう感じているのか。苦しい思いや後悔の念を吐露した中年男性と、温かい声をかける稲田の心は通じ合い、感動的なラストへとつながっていきます。
この漫画は13.7万件の“いいね”を集めるなど大きな話題に。コメント欄には「涙腺が崩壊しました」「ボロ泣きでした」「めっちゃ温かい話」などと、コメントが付いています。
作者が漫画に込めた思い 自分がしたことに「意味があった」と思えるなら
漫画家として「そらいろフラッター」(スクウェア・エニックス刊)といった作品も描いているおくらさん。「うちの息子はたぶんゲイ」(スクウェア・エニックス刊)は、11月22日(月)に第4巻が発売される人気作です。今回話題になった漫画にはどのような思いが込められているのか、話を伺いました。
Q. 作品を描く上でこだわった点は何でしょうか?
「人物像に見合った言葉遣いになるよう、いつも心がけています。今作でも例えば、稲田青年がモノローグなどで突然難しい言葉や言い回しを使わないようにしました」
Q. 青年とおじさんのその後の関係はどうなったのでしょうか?
「ご想像にお任せします」
Q. 今回の作品に込めたメッセージを教えてください。
「自分のしたことに対して『無意味だ』と切り捨てるよりも『何か意味があった』と思えたなら、改めて向き合えたり救われたりすることがあるんじゃないか、ということでしょうか」
Q. 大きな反響になりましたが、心に残った感想や、感想を読んで気が付いたことを教えてください。
「実際にケーキ屋で働いてるという方々からの『漫画のおじさんのようなお客さんは実際にいます』という感想が興味深かったです。自分には想像もつかないようなエピソードが、現実にはたくさんあるのだろうなと思います」
(Hint-Pot編集部)