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ピーク期は1日2500個超を販売 元デザイナーが“おはぎ”を作り始めた理由とは

公開日:  /  更新日:

著者:Hint-Pot編集部・出口 夏奈子

人が絶えず訪れる大阪・豊中の商店街にある「森のおはぎ」。店頭に立つ森百合子さん【写真:Ryousuke Yano】
人が絶えず訪れる大阪・豊中の商店街にある「森のおはぎ」。店頭に立つ森百合子さん【写真:Ryousuke Yano】

 さまざまな分野で活躍する女性たち……と聞くと、「自分とは異なる世界で生きている」「自分とは違う特別な人なのでは」と、まったく関係のない話だと感じてしまう方が多いかもしれません。とはいえ、「生きる」中で感じることや苦悩は、どのような立場でも存在しています。そんな「特別」と思いがちな人物にスポットライトを当て、それぞれの人生を紐解く連載「私のビハインドストーリー」。第6回(後編)は大阪で連日売り切れの大人気となっている「森のおはぎ」の森百合子さんです。おはぎ職人と経営者という2つの顔を持つ森さん。その哲学とはどのようなものなのでしょうか。

 ◇ ◇ ◇

きっかけは地味だけどおはぎが好きだったと気付いたこと

 これまでに生み出したおはぎの数は約50種類。日本人にとってなじみ深いおはぎながら、おばあちゃんが作るものよりも小ぶりの「森のおはぎ」は、雑穀米を使用した食感が特徴です。定番の5種類と季節限定の3種類が常時店頭に並び、おはぎとは思えないほど彩り豊か。連日売り切れる大人気の専門店です。

 そんな大人気のおはぎを生み出しているのが、森百合子さん。美大時代には、喫茶店でお菓子やサンドイッチを作るアルバイトをしていました。美大での物作りと、喫茶店でおいしいものを作ることは、森さんにとって同じこと。そして、生み出すものへのこだわりも。

「おいしいものを作りたい。おいしく作ることへのこだわりが自分は強かったみたいです」

 森さん自身も食べることが大好きでした。そしておいしいものを食べた時に感じられる幸福感も大好きでした。

「会社で働いていた時はお客様が遠くて、自分が生み出したものを喜んでもらえているのかどうか分かりませんでした。何か自分の手元だけの仕事になっているような感じがして、そこに少し疑問を感じていたんです。だから、自分が生み出したものを自分の手で売ることが、お客様にとってもいいのかなと。そして、おいしいものを食べて幸せな気持ちになる。『そんな仕事って素敵だなあ』と思ったんです」

夢へのスタート地点はカフェでのイベント出品

定番の5種、季節の3種が店頭に並ぶ。写真左から「焼き栗黒米もち」「鳴門金時雑穀もち」「黄身かぼちゃ黒米もち」「くるみ黒米もち」【写真:Ryousuke Yano】
定番の5種、季節の3種が店頭に並ぶ。写真左から「焼き栗黒米もち」「鳴門金時雑穀もち」「黄身かぼちゃ黒米もち」「くるみ黒米もち」【写真:Ryousuke Yano】

 そう思うと、次は「何を作ろうかな?」と考えます。考えた中で、森さん自身が疲れた時によく買っていたのが、わらび餅とおはぎでした。

「『何を作ろうかな』と考えた時に上がってこなかったくらい地味なお菓子なんですけど、それでも元々一番よく買っていたのがわらび餅だったんです。でも、夏が終わるとわらび餅も終わってしまう。そこで、きなこつながりで、きなこのおはぎを食べるようになりました。そうしたら粒あん、こしあんといろいろ食べるようになって、『奥が深いな』って思うようになっていたんです。自分自身でもそれが好きだなんて思っていなかったくらいなんですけど、でも一番食べているし、好きなんやなあって」

 そうしておはぎを作ることに決まりました。

経営者として大事にしているものは「楽しさ」

以前は「森のおはぎ」のファンだったスタッフも働く職場。お彼岸時には1日2500個以上売れるおはぎはすべて手作り【写真:Ryousuke Yano】
以前は「森のおはぎ」のファンだったスタッフも働く職場。お彼岸時には1日2500個以上売れるおはぎはすべて手作り【写真:Ryousuke Yano】

 テキスタイルデザイナーからおはぎ職人へ。森さん自身はまったくの素人からおはぎ作りをスタートさせましたが、「森のおはぎ」には製菓学校で専門的なおはぎ作りや考案の経験があるスタッフがいます。彼らを見ていると、「基礎に戻らないといけない」という学びがあり、「もっと上手に作りたい」という思いが未だに湧いてくるそうです。

 1人で始めたおはぎ作り。今では20人を超えるスタッフが一緒に「森のおはぎ」を盛り上げてくれています。しかし大変なのは「不器用なスタッフや成長スピードの異なるスタッフなど、自分とはまったく違う人をどう育てていくか」。そして森さんが経営者として大事にしているのは「楽しさ」だと言います。

「経営者としてしっかりしているか、と言われればまったくしていなくて。ただ、できるだけシンプルに、楽しく作って働くことを一番大事にしています。忙しい時期は本当に大変なんですけど、それでもスタッフみんなで話しながらおはぎを作る。そういう空気感ってお客さんにもきっと伝わると思うし、働く側も楽しい方がいいですからね」